誰もが息をひそめるなか、ある男性が放った一言が店内の空気を変えることに──。
今回は筆者の知人から聞いた、誰もが遭遇するかもしれないトラブルエピソードをご紹介します。
怒鳴る男性客
これは日曜日の昼、ファミレスで子どもとランチをしていたときの出来事です。
時間帯のせいもあり、店内はとても混み合っていて、レジには数人のお客さんが並んでいました。
同じようにその列に並び、会計を待っていた私たち。
レジの様子を見ると、足をダンダンと鳴らし、明らかに苛立っている60代くらいの男性客が目に入りました。
『怖いなあ』と思っていたのも束の間、レジにいる店員に怒鳴り始めたのです。
「まだかよ!」
「早くしろって言っているだろ!」
クレーマー
レジにいたのは若い女性スタッフで、胸元には“新人研修”との文字がありました。
オーダー端末とレジを何度も確認しながら丁寧に対応してくれていたのですが、男性は苛立ちを抑えられない様子。
何度も頭を下げる女性店員でしたが、賑わう店内で人員不足なのか、ほかの店員が手助けできる状況でもないようで......。
レジ付近の空気は凍りついていました。
私が女性店員をかばおうかと思った瞬間、怒鳴る男性客のすぐ後ろに並んでいたスーツ姿の男性客が、静かに口を開いたのです。
神対応
「そんな態度で焦らせておいて早くなると思いますか?」
「みんな静かに待っているのですから、順番にやってもらいましょうよ」
その言葉に男性客はムッとした表情を浮かべていたものの、周囲からの鋭い視線に気づいたのか、その後は静かに待ってくれました。
女性店員は深く頭を下げながら会計を続け、レジの列はスムーズに流れ始めたのです。
周囲は『よく言ってくれた』というような安堵の空気が広がっていました。
思いやれる人に
会計後、声をあげてくれた彼に声をかけると、
「私も昔接客業に就いていたので他人事と思えなくて」
と微笑んでいました。
トラブルに直面したとき、冷静に声を上げられる人がいたことに心が救われました。
私自身も、いざというときに味方になれる、相手を思いやれる人間でいたいと思った出来事でした。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。