体調不良でタクシーを利用したら……
Tさんは当時妊娠初期。つわりなど体調の変化が多い時期でしたが、産休に入るまでは頑張ろうと毎日電車で通勤していました。
「うっ……」
その日はとても暑い日であったこともあり、Tさんは通勤途中の駅で気分が悪くなってしまいました。
「このままじゃ遅刻しちゃう」
しかしいつも乗っている電車は混みあうため、とても乗れそうにありません。そこでTさんは仕方なく駅を出てタクシーに乗り込みました。
「〇〇までお願いします」
運転手の男性はTさんがバッグにつけているマタニティマークをちらりと見て、信じられない発言をしたのでした。
無神経発言にビックリ
「ひと駅くらいそのまま電車乗っとけば席譲ってもらえたんじゃないの? 女は優遇されてていいよな」
「……え?」
運転手の男性は何も言わずに車を発進させましたが、どうやら会社までの距離が近かったのが不満でそのような発言をしたようでした。
Tさんはあまりにも無神経な発言にショックを受けたものの途中で降りることもできず、そのまま会社へ。そして先輩の女性社員に、タクシーでひどい発言をされたと愚痴をこぼしました。
「何それひどい! ちゃんと会社に言った方がいいよ、他の妊婦さんも嫌な思いをするかもしれないし」
そこでTさんは休憩時間に、タクシー会社に今朝運転手の男性にかけられた言葉に傷ついているという内容の電話をかけました。
すぐにタクシー会社からは丁寧な謝罪と今後の指導について折り返しの電話がありましたが、Tさんはまた同じ運転手の男性に遭遇する可能性があることに不安をおぼえ、その会社のタクシーは利用しないと決めたそうです。
マタニティマークは、妊婦さんが、万が一の事態に直面した際に、周囲の人々が気づき、必要な支援ができるようにするための大切なサインです。しかし残念ながら、マタニティマークをきっかけに不快な思いをしたという経験がある人も少なくないといいます。
このマークがSOSのサインとして機能し、理解ある人々の配慮を促すきっかけになることを願ってやみません。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。