そんな空気を一変させたのは、意外な人物のひと言でした──。
今回は筆者の知人から聞いた、電車内での気づきのエピソードをご紹介します。
席を占拠する若者
これは休日の午後、混雑気味の電車に乗ったときの出来事です。
座席は予想通り埋まっていたため、立つことは全然構わなかったのですが、1つ気になることが……。
1人の若者が隣の席にリュックと買い物袋を置いて、合計3席分を堂々と占拠していたのです!
それもそこは優先席。
外見からは分からない何か事情があったのかもしれませんが、スマホでゲームしている姿を見るに体調が悪そうとはどうしても思えません。
混雑している車内で1人で3席分を占拠している状況に、私は少し苛立ってしまいました。
高齢の男性
私はその若者の前にたまたま立って乗っていると、次の駅で高齢の男性が乗ってきました。
あたりを見回しながら、足が悪いのか手すりにつかまるその姿が痛々しい男性。
私は、自分が声をかけるべきか、でもトラブルになるのは嫌だと葛藤しました。他の誰かが席を譲ってくれるかもしれない。若者も気づいてくれるかもしれないと、ただ見守ることしかできませんでした。
私以外にもその若者に何か言いたそうにチラチラ見ていた乗客が何人かいて、車内には誰もが声をかけるのをためらうような、妙な緊張感が漂っていました。
指摘したのは?
私が声をあげようとしたそのとき、若者にツカツカと近づいてきたのは小学生くらいの男の子。
「おじいちゃんを座らせてもらえませんか?」
とストレートに声をかけたのです。
驚いたように顔を上げた若者は、慌てて荷物をどけ
「すみません、どうぞ」
と席を空けてくれました。
大人たちが目くばせし合っていた間に、しっかり若者に指摘してくれた男の子。
優しい気遣いのできる彼に、高齢の男性はにこやかな笑みを浮かべて一礼し座りました。
反省
注意できなかった大人たちの代わりに、子どもが空気を変えた瞬間でした。
すぐに動けなかった自分を恥じつつも『小学生のまっすぐな言葉には強い力がある』と感じた私。
『年をとって大人になっても、子どもに学ぶことはたくさんあるな』と反省した出来事でした。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。