救世主は、ベテラン仲居さん
誰もが動けずにいた、そのときです。
浴室の扉がそっと開き、ベテランの仲居さんが現れました。
彼女は一連の光景を目にしても穏やかな笑みを浮かべながら、流暢な英語で彼女たちにこう言ったのです。
「This onsen is like a delicate soup. Please don't add extra 'Umami' from your towel.」
(この温泉は繊細なスープのようなもの。タオルで余計な『うま味』を加えないでくださいね)
突然英語で話しかけられ、きょとんとしていた彼女たちの顔が、意味を理解した途端、ぱっと笑顔に変わり、その後には楽しそうな笑い声が響きました。
心に染みた「おもてなし」の神髄
「Sorry!」と彼女たちは素直にタオルを湯船から出し、その後は静かに温泉を楽しむようになりました。
たった一言で、気まずかった空気は和やかなものに変わったのです。
ルールを一方的に押し付けるのではなく、文化の違いをユーモアで乗り越える。
その“粋な一撃”に、私は心の中で拍手喝采を送っていました。
これこそが、日本の「おもてなし」の神髄なのかもしれない、と感動し、心まで温まった、忘れられない出来事です。
【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。