「いいことしてるつもり」だった私
娘の家に週に一度通って、孫のR太の面倒を見るのが私の楽しみでした。
礼儀や身だしなみに厳しい方だと周囲からは言われるほどで、孫にも無意識のうちにその価値観を伝えてしまっていたのかもしれません。
「背筋を伸ばして」「そんな言葉遣いじゃ恥ずかしいわよ」
私の言葉は、いつも「こうあるべきだ」という私なりの正しい振る舞いを基準にしていました。
まさかの涙に、凍りつく私
ある日、宿題の字が汚いと注意したとき、R太が鉛筆を置いて、ぽろぽろと涙をこぼしたのです。
そして、こう言いました。
「ばあばは、なんで怒ってばかりなの? ぼくのこと、嫌いなの?」
その瞬間、私は動けなくなりました。
私はただ“良い子に育ってほしい”一心だったはず。でも、それが彼には“怒ってばかりの怖いばあば”に見えていたのです。
ずっと、自分の満足のためだった
帰り道、私はバスの窓から流れる景色を見ながら反省しました。
R太が小さな体を震わせて泣く姿が頭から離れませんでした。
私は孫のためと言いながら、結果的に自分の理想を押しつけてしまい、R太の気持ちを一番に考えていなかったことに気づき、恥ずかしさと後悔でいっぱいになりました。
あの子の素直な言葉がなければ、きっと私はずっと気づけなかったと思います。
もう“指導”しない、“寄り添う”と決めた
次に会った日、私はまず「この前はごめんね」と謝りました。
そして、宿題のあと、字の丁寧さを見て「すごく頑張ったね」と笑って褒めると、R太はちょっと照れた顔で「えへへ」と笑ってくれました。
最近は注意を我慢して、R太を褒めるようにしています。
するとR太は、よく笑い、よく話してくれるようになりました。
「ばあばって、優しくなったね」その一言が、私の宝物です。
私は“理想を押し付ける怖いばあば”ではなく、“寄り添うばあば”でいたいと、心から思っています。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。