また、”あの人”が来た
平日の夕方、いつものスーパーで買い物をしていたときのことです。レジに並ぶと、後ろから大きな声が聞こえました。
「私、急いでるのよ。先にやってもらえる?」
振り返ると、いつもこの時間に現れては割り込んでくる中年女性。
ご自身のことを“常連”とおっしゃるその人は、毎回「時間がない」「少しだけ」などと言っては列を飛ばすので、ご近所ではちょっとした有名人になっていました。
その日も、当然のようにレジの前に滑り込みました。
新人らしき店員の対応
レジには、見慣れない若い店員が立っていました。
学生バイトのようで、少し緊張した様子でしたが、割り込んできた女性に丁寧に声をかけました。
「申し訳ありません。こちらは順番でご案内していますので、後ろの列にお並びください」
すると女性は、鼻で笑ってこう言いました。
「あなた、私がどれだけここに通ってるか知らないの? 店長呼んで」
その一言が効いた!
若い店員は少し戸惑いながらも、変わらず落ち着いた口調で言いました。
「ご常連のお客様ほど、ルールを守ってくださいます。私も、この店で働き始めて間もないですが、それは毎日感じています」
店内が一瞬で静まり返りました。
女性は何も言えず、無言のまま列の最後尾に戻っていきました。
本当の“常連”の言葉
その後、私の番が来たとき、前に並んでいた年配の男性が若い店員にこう言いました。
「君、いい接客だったよ。あの客には、いつも困ってたんだ」
私もつい「ほんと、ありがとう」と言ってしまいました。スカッとした空気が広がる中、私はレジを出ました。
礼儀を守るのが、本当の常連だと教えてくれた若い店員。
あの落ち着いた対応に、私は心の中で大きく拍手を送りました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。