誕生日に交差した想いが、夫婦の関係に静かに波紋を広げていきます──。
今回は筆者の知人から聞いた、夫婦間のすれ違いに関するエピソードをご紹介します。
誕生日
私は今年、30歳という節目を迎えました。
誕生日には、3歳と6歳の娘たちが手紙や似顔絵をプレゼントしてくれました。どうやら長女が計画してくれた様子。
あどけない手つきで書かれた文字や心のこもった絵が愛おしくて、「幸せな誕生日を迎えられたなあ」と感じていたのですが......。
娘たちが私にプレゼントする姿を見ていたはずなのに、愛する夫からは一言もお祝いされなかったのです。
朝食時も、出勤前も、何事もなかったかのようにいつも通り過ごす夫。
そんな姿を見て「ひと言でもおめでとうって言ってくれてもいいのに」と、胸のなかでモヤモヤが膨らんでいきました。
そして夜になり、我慢できずに
「今日、何の日か分かる?」
と思わず聞いてしまったのです。
ママとして
夫は一瞬きょとんとした顔をしてから、
「ママとして祝ったからいいでしょ?」
と軽く笑うだけ。
すぐにスマホに視線を向け、私の問いはサラッと流されてしまいました。
その瞬間、怒りよりも虚しさが押し寄せたのです。
“ママ”という存在になれたこともとても嬉しいのですが、夫にとってはいつまでも妻として見てほしかったのに......。
そんな寂しさが心を締めつけました。
気持ちをぶつけると?
翌日、子どもたちが寝た後、もう一度夫に気持ちを伝えることに。
「祝ってほしいわけじゃないけど覚えていてほしかった」
「あなたにとっていつまでも大切な女性でありたいから」
夫はしばらく黙ってから、
「最近は子どもたちのママとして、子育てのパートナーとして見ていたかも」
と打ち明けてくれました。夫もまた、子育てや仕事で忙しく、夫婦という関係性を改めて見つめ直す余裕がなかったのかもしれません。
たしかに、私自身も母親業に追われて、“お互いを思いやる気持ち”を置き去りにしていたかもしれません。
慌ただしい日常のなかで、夫への感情をうまく言葉にできず「察してほしい」と思うばかりだったと反省しました。
言葉で伝える大切さ
この一件以来、私たちはちょっとした気持ちでも言葉にするように心がけています。
結婚して母になっても、“夫にとって大切な女性”でいるために。
気持ちを伝えることを、これからも大切にしていきたいです。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。