これは筆者自身の妊娠中の体験です。
電車通勤中、マタニティマークへの偏見が怖くて、ずっと着けずに乗っていた私。ある日、つわりがつらく初めてマークをつけて電車に乗ったところ、思いがけず温かい声をかけられました。不安な心がふっと軽くなった、忘れられない出来事です。

マタニティマークをつけるのが怖かった

通勤に電車を使っていた私は、妊娠してからもずっとマタニティマークをつけずに通っていました。ネットやSNSで、「マークをつけたら嫌味を言われた」「わざと押された」などといった一部の心ない話を見聞きし、怖い話をたくさん見ていたからです。

「目立たなければ、トラブルに巻き込まれずに済む」と思って、体調がつらくても黙って立って乗る日々が続いていました。

つわりのピーク→初めてマークをつけて出勤

そんなある日、つわりが特につらくて立っているのがやっとの状態に。会社までは30分以上電車に揺られるため、「今日ばかりは無理かもしれない」と思い、ついにマタニティマークをバッグにつけて出勤する事にしました。

不安はありました。冷たい視線や嫌味を言われたらどうしよう……そんな思いでいっぱいでした。

「どうぞ、座ってください」スーツ姿の男性の優しさ

朝のラッシュで満員の電車に乗り込み、吊り革につかまった瞬間。目の前に座っていたスーツ姿の男性が立ち上がり、優しくこう言ってくれました。

「大丈夫ですか? よかったら座ってください。」

私は驚いて、しばらく言葉が出ませんでした。怖がっていたマタニティマークが、こんな優しさを引き寄せてくれるなんて。深くお礼を伝えて、その席に座らせてもらいました。

帰り道もまた、心温まる出来事が

その日の帰宅時も、マークを外さずに電車に乗りました。すると、今度は目の前の女性がすぐに気づいて「どうぞ、おかけください」と自然に席を譲ってくれたのです。

「世の中、怖い人ばかりじゃない」
その事を、心から実感した瞬間でした。もちろん、全ての人が同じように親切であるとは限りません。ですが、この経験を通して、想像以上に多くの人が思いやりを持っている事を肌で感じる事ができました。

優しさが、妊娠中の不安を溶かしてくれた

妊娠中は体も心も不安定で、ちょっとした事が大きなストレスになります。でも、こうして声をかけてもらえた事が、どれだけ私を救ってくれたか計り知れません。

それから私は、外ではマタニティマークを堂々とつけるようになりました。そして、自分自身も「誰かのしんどい時間」に寄り添える存在でありたいと思うようになったのです。

たった一言の「どうぞ」が、誰かの心を大きく救う事がある……。
あの日の出来事は、今でも私の中でずっと大切な記憶です。

【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:北田怜子
経理事務・営業事務・百貨店販売などを経て、現在はWEBライターとして活動中。出産をきっかけに「家事や育児と両立しながら、自宅でできる仕事を」と考え、ライターの道へ。自身の経験を活かしながら幅広く情報収集を行い、リアルで共感を呼ぶ記事執筆を心がけている。子育て・恋愛・美容を中心に、女性の毎日に寄り添う記事を多数執筆。複数のメディアや自身のSNSでも積極的に情報を発信している。