「ママとずっと一緒にいたい!」
ある日の夜。歯磨きを終え、寝る直前のふとした拍子に、息子が真顔で言いました。
「大きくなったら、みんな自分で暮らさないといけないの?」
大人になると、家族はバラバラになってしまうのかという疑問が湧いた様子の息子。「絶対こうしなければいけないなんてことは、なにもないんだよ。それは自分で決めたらいいんだよ」と伝えると、「ぼくは、ママと一生一緒に暮らす!」
その純粋なひと言に、思わず「ありがとう、嬉しいよ」と微笑む私。けれど、ふと現実的なことも伝えておこうと「でもさ、ママの方が先におばあちゃんになっちゃうんだよね~」と言うと、息子は一瞬真剣な表情に。
出てきた答えは“薬を作る人”
しばしの沈黙ののち、息子が自信満々に言い放ちました。
「じゃあ、大きくなったら“ママが生き返る薬”を作る人になる!」
唐突すぎるその宣言に、一瞬耳を疑った私。でも、どうやら本気らしく、「ママが死んでも、その薬で生き返ってまた一緒に暮らせるようにするんだ」と、キラキラした目で説明を続けてきます。
サッカー選手、まさかの保留
息子の現在の将来の夢は「サッカー選手」。
「薬を作る人になったら、サッカー選手はどうするの?」と聞くと、少し考えてからこう答えました。
「うーん、もし薬が効かなくてママが生き返らなかったら、そのときはサッカー選手になる!」
そのとき、私は心の中で思わず突っ込みました。
――え、それって何歳の話? 息子はもう立派なおじさん(いや、おじいさん!?)なのでは……。
愛が詰まった未来の選択肢
息子の中では、「ママと一緒にいられる未来」を実現するためには、まず薬の開発。そして失敗したときの次の選択肢がサッカー選手、という順番らしいのです。
論理は子どもらしく破天荒だけれど、その奥には確かな愛情と“ママと一緒にいたい”という願いが詰まっていて、なんだか胸がぎゅっとしました。
未来なんてまだ先だけど
いつか彼が本当にどんな道を選ぶかなんて、今はまだわからない。けれど、「ママと一緒にいたいから」という理由で人生を真剣に考えてくれるその姿が、たまらなく愛おしかった夜の出来事。大きくなって、反抗期がきたりなんてした日には、きっとその会話を思い出すのだろうな……と感じた一コマでした。
子どもって、突拍子もないことを真剣に考える天才。子どもの全力の愛を感じられる今、この瞬間を、もっと大切にしないとなと、改めて感じたのでした。
【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
FTNコラムニスト:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。