長い不妊治療の末に授かった娘を前に、義父が放った“残念”というひと言。傷ついた妻の前で、涙をこぼしながら義父を叱った夫の言葉とは。これは、筆者の知人・理恵さん(仮名)が体験した話です。

その流れで、ふと口にしたのです。

「いや〜羨ましいですね、男の子で。うちは残念ながら女の子でして」

理恵さんは、心臓をぎゅっとつかまれたような気がしたといいます。

不妊治療を乗り越えてようやく授かった娘。
その子を“残念”と笑われたことが、何よりつらかったのです。

義父に悪気はなかったのかもしれません。
でも、だからこそ何も言えず、理恵さんは黙ってうつむきました。

涙をこぼしたのは

客人が帰ったあと、応接間には静けさが戻っていました。

沈黙を破ったのは、理恵さんの夫。
彼の目には、うっすらと涙がにじんでいたそうです。

「父さん! 不妊の原因は、僕なんだ」

妻の心を救った、夫の雄姿

驚いた表情を浮かべた父に、夫は続けました。

「理恵は、何年も治療に耐えて、命がけで娘を産んでくれた」
「“残念”なんて、笑われるような命じゃない!」

夫は父親をまっすぐに見つめ、声を震わせながら話していました。

「その言葉は、俺の妻を侮辱している!」

涙を浮かべ、強い口調で言い切った夫の姿を、理恵さんは初めて見たといいます。

その瞬間、胸にあった怒りも悲しみも、全部吹っ飛んでしまった──そう話していました。

【体験者:30代・女性・会社員、回答時期:2025年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。