フグ料理の白子に感動した夫。
私の冗談を真に受けてしまった結果、予想外の展開に……?
「10年早いわ!」は本音と冗談のあいだ
その後も、買い物中にそのお店の前を通ると「あそこだよ!」とテンション高く話しかけてきます。
そして、決まって「今度、一緒に行こうよ」と誘ってくるのです。
あるとき、ふと「そのコースっていくらだったの?」と聞いてみたら、まさかの高額。
思わず「10年早いわ!」と反射的に口にしてしまいました。
金額を聞いて冷静ではいられなかったし、冗談めかして言ったつもりでした。
まさかそれを本気で受け取られるとは思ってもいなかったのです。
冗談が本気に? カウントダウン開始
ところが夫は、私のその言葉を真に受けてしまったようで「じゃあ、あと〇年か」とうれしそうに言い始めました。
それからは、カレンダーを見て「あと何年だね」と言ったり、スマホを片手に「あの店、まだあるかな」と心配したり。
まるで子どものように目を輝かせていたのです。
私は「ちょっとした冗談」のつもりだったのに、まさかこんなにも真面目に受け止められるとは。
途中で訂正しようかとも思ったけれど、夫があまりにも楽しそうに話すので、言い出せなくなってしまいました。
それからというもの、夫はそのお店の予約サイトをお気に入りに登録したまま。
近くを通るたびに営業状況を確認している姿を見て、私はなんだか申し訳ないような、くすぐったいような気持ちになります。
10年後「ちょうどいいね」と笑えたら
数年先のことなんて、今はまだ想像もつきません。
私たちがどんな生活を送っているかもわからない。
でも、あのとき冗談のつもりで口にした「10年早いわ」が、いつの間にか私たちのささやかな未来の楽しみになっています。
10年後、笑いながら白子を頬張る私たちがいたなら。
そのときは、きっと「ちょうどいいね」と、穏やかに笑い合える気がします。
【体験者:50代女性・筆者、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。