「お父さんは何もしない!」と、娘が突然怒鳴りました。その瞬間、私の胸の中にあふれた感情とは……? 里帰り出産をめぐる出来事を、友人が語ってくれました。

里帰り出産、3人での新生活

娘が里帰り出産をし、生後まもない赤ちゃんとの生活が始まりました。

30代の娘にとっても、育児は初めて。

私は産後のサポートを精一杯するつもりで、授乳の手伝いや夜泣き対応、おむつ替えなどを一緒にやっていました。

胸が痛んだ娘の言葉

産後は、気分が沈んだり、ピリピリするのは誰にでもあること。

私はそう思って寄り添ってきたつもりでした。

でも、困ったのは娘の怒りの矛先が、私の夫――つまり娘にとっての“お父さん”に向いたとき。

「赤ちゃんの面倒、もっとみてよ!」
「お父さんは何もしてないじゃん!」

夫は昔から口数が少ない人で、直接赤ちゃんに関わるタイプではありません。

しかし、私の夫は沐浴用のお湯を早めに沸かしているし、洗濯物はいつの間にかたたんである。おむつのゴミも、黙ってまとめて捨ててくれるのはおじいちゃんである夫。

言葉も態度も大げさじゃないけれど、私はそれをちゃんと見ていました。

だからこそ、娘の「何もしてないじゃん!」という言葉に、私の胸もチクリと痛んだのです。

“見えない思いやり”を伝えた私

ある日、娘が不機嫌なままキッチンで夫に怒鳴っていたとき、私は思い切って言いました。

「たしかにお父さん、表には出てこないけど、あんたが寝てる間に洗濯してるし、沐浴のお湯だって毎日用意してるの、知ってた? おむつのゴミまとめてくれてるのもお父さんだよ?」

娘は黙りました。数秒の沈黙のあと、「……知らなかった」とつぶやいたのです。

それから少しずつ、娘の態度は変わりました。

夫にぶっきらぼうだが「ありがとう」と言うようになり、夫もほんの少しだけど笑顔が増えた気がしました。

口に出さない人の思いやりは、見えにくい。でも、誰かがそれをちゃんと伝えてあげれば、関係は変わっていきます。

家族だからこそ思いやりを

あの日、私が一言かけてよかったです。

家族だから甘えてしまうのは仕方ない。産後の不安定な時期は尚更のこと。

でも、一緒に生活するうえで、思いやりの心はお互い持っていたい。しみじみ感じた出来事でした。

【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。