値踏みするような冷たい視線
その日、私は仕事の合間に、ふらりとハイブランドのブティックに立ち寄りました。
服装は動きやすいデニムにTシャツという、かなりラフな格好。
そのせいか、1人の女性店員の視線が、どこか私を値踏みしているように感じられました。
向けられる作り笑いの下に「この人、冷やかしかな?」というレッテルが透けて見えるようで、なんとも居心地の悪い空気が流れます。
失礼すぎる一言にカチン
ディスプレイされていた新作バッグを手に取ると、店員はすかさず近づいてきて、私にこう告げました。
「そちらは非常に特殊なレザーでして。お手入れも大変ですし……お客様には少し、扱いが難しい商品かと」
その言葉には明らかに「あなたにこの価値は分からないでしょう?」という棘が含まれていました。
静かな反撃、私の“本当の職業”
カッとなる気持ちを抑え、静かに店員を見据えて、私は落ち着いたトーンでこう切り出しました。
「このレザーのタンナーはイタリアのA社ですね。植物タンニン鞣しで、この独特のシボ感は昨年から導入された新しい仕上げ方法。先月、ちょうど現地で工場の責任者に取材したばかりなんですよ」
淀みなくスラスラと知識を披露すると、店員の顔からみるみる血の気が引き、言葉を失っているのが分かりました。
実は、私の職業はファッションコラムニスト。
特に、皮革加工の知識なら、店員より何枚も上だという自信があります。
知識は最高のアクセサリー
結局、私の言葉に凍りついた店員に代わり、奥から出てきた支店長が平謝り。
ですが、すっかり買い物をする気も失せた私は、丁重にお断りして静かに店を出ました。
人は見た目で判断されがちですが、知識は時として、どんなに着飾った服よりも雄弁な武器になります。
自分自身をアップデートし続けることの大切さを、改めて痛感した出来事でした。
外見よりも、内面の輝きこそ、最高のアクセサリーなのかもしれませんね。
【体験者:40代・女性・フリーランス、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。