「お互い様」を信じていた
「ごめん、今月ピンチで……」
生活費は折半、財布は別々の私たち夫婦。
夫がそう切り出すたび、私は仕事で使うスーツや書籍代だろうと思い「お互い様だから」と快く応じていました。
「ボーナスが出たら、すぐ返すから」と言う夫の言葉を信じて、独身時代からコツコツ貯めた私の口座からお金を出すのは、夫婦なら当たり前の助け合いだと思っていたのです。
募る違和感と消えていく貯金
でも、その「ちょっと貸して」は癖になり、気付けば私の貯金は100万円以上消えていました。
そんなある日、夫の書斎で探し物をしていたときのことです。
ふと1枚の紙が目に留まりました。
それは、高級ブランドバッグのローン返済明細書。名義は義母で、引き落としは夫の口座からでした。
……まさか、こんなことに私の貯金が使われていたなんて。
夫が私から借りていたお金は、生活費どころか、義母の浪費のためだったのです。
その瞬間、夫にとって私は『支え合う家族』ではなく、ただの『便利な財布』だったと気付いてしまいました。
あなたにとって家族って何?
その夜、私は震える声で夫を問い詰めました。
「このお金、どういうこと? 私の貯金はお義母さんのバッグ代に消えてたの?」
夫は一瞬驚いた顔をしたものの、すぐにため息をつきました。
「見たのか。……別にいいだろ。家族なんだし、親が困ってたら助けるのが当たり前だろ!」
「家族」の選択
翌日、私は無言でテーブルに2枚の紙を置きました。
1枚は今まで貸したお金のリスト、もう1枚は夫の書名欄の空白だけが残る離婚届。
「このお金を返せないなら、もうあなたたちの“家族”でいるのは無理。私と息子のための“家族”になりたいなら、どちらを選ぶか決めて」
夫はそのときになって初めて青ざめ、アタフタと弁明を始めました。
今は義実家と夫に少しずつ返済はさせていますが、もう愛情は戻りません。
いずれ息子が独り立ちしたら、私は離婚するつもりです。
2度と誰かの“都合のいい財布”にはならないと、心に誓いました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。