新天地での“ママ付き合い”
夫の転職をきっかけに、隣の地区へ引っ越した沙織さん。
新しい保育園では、
親同士のつながりを大切にする風土があり、“ママ友ランチ会”という集まりが年に何度か開かれていました。
はじめは戸惑いながらも、
「保護者間の交流も大切かな」と思い、参加することに。
しかし、その集まりには、“常識”とは少しずれた空気が流れていました。
有休取れないの?
ある日、ランチ会の日程について、仕切り役のY子さんから連絡がありました。
平日は仕事が忙しくて難しいと伝えると、返ってきたのは驚きの言葉。
「土日は家族の時間だからダメ。有休取れないの? いざとなったら欠勤すればいいじゃん」
一瞬、冗談かと思いました。でも、その口ぶりはどうやら本気のよう。
小さな子どもがいるからこそ、有休は“もしも”のために残しておきたいのです。
文句ひとつ言わず支えてくれる職場に、沙織さんは、むしろ申し訳なさすら感じていました。
そんな大切な有休を、誰かに「使え」と指図されるなんて、違う。
まして「欠勤すればいい」とまで言われるなんて。
それはさすがに、踏み込みすぎです。
こんなにも感覚がずれているのかと、心がざわついてしまいました。
夫の後押し
帰宅後、夫に相談すると、
「そんなの無理して合わせる必要ある?」と返されました。
そのひと言が、沙織さんの背中をそっと押してくれたのです。
悩んだ末に意を決して、丁寧な文面で欠席の連絡を送りました。
「仕事の都合で、今回は参加できません。本当にごめんなさい」
しかし、返ってきたのは皮肉たっぷりの返信。
「有休も取れないなんて、ずいぶんケチな会社に勤めてるんですね」
驚きのイヤミに、さらに複雑な気持ちになりました。
“ふるい”を通り抜けて残ったもの
数日後、何人かのママ友から個別に連絡がきました。
「私も断ればよかった」
「保育園の行事じゃないのに、おかしいよね」
今では、無理せず自分の軸でつき合える人たちだけが、
沙織さんのまわりに残ったそうです。
「あれはいい“ふるい”だった」
そう微笑んだ沙織さんの表情には、少しの迷いもありませんでした。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。