これは、筆者の友人の娘 Nちゃんの話です。
かつて人見知りが激しかったNちゃんに、父親はいまも “昔のままの娘像” を重ねていたよう。
でも久々の帰省中、成長した娘の “意外な返し” に、思わず言葉を失ったそうです。

かつての “パパ命” な娘

友人は、転勤族の夫と子ども2人の4人家族。
長女のNちゃんは、かつて極度の人見知りで、特に男性に対して警戒心が強い子でした。
社宅では、他の家のお父さんを見ただけで泣き出してしまうほど。
誰かに抱っこされるなんてもってのほかで、見送りのときに手を振り返すのも、夫に対してだけでした。
そんな姿を見て、夫は「俺じゃないとダメなんだな」と、まんざらでもない様子だったのです。

家族の生活が変わっても、父の中では……

その後、地元に戻って家を購入し、Nちゃんたちも無事に成長。
ところが夫は再び転勤になり、今度は単身赴任に。
直接会う機会は減ったものの、電話や帰省のたびに交流は続いていました。
ただ、夫の中では、Nちゃんは今も「人前で話せない かよわい子」のままだったようです。

娘からの “冷静な返し” に固まる父

ある日、久しぶりに帰省した夫に、Nちゃんが「学級委員になった」と報告したときのこと。
「お前、人前で話すの苦手やろ? 泣いてしまうんじゃないの?」
夫が笑いながらそう言った途端、場の空気が変わりました。
Nちゃんは眉一つ動かさず、
「いつの話してるの? お父さんが家のこと全然見てないから知らないだけで、そんな時期はとっくに終わったわ」
静かに、でもしっかりとした口調で、返しました。

実際、学級委員は立候補制ではなく、クラスメイトからの投票で選ばれるもの。
つまり、Nちゃんが「みんなをまとめられるしっかり者」として信頼された証です。

置いていかれまいと、父なりの変化

その一言で、夫はようやく自分の中での娘像が過去のままだったことに気づいたようでした。
ショックだったのか、その後は言葉少なになり、少し戸惑っているように見えました。

しかし、それから夫も少しずつ変わっていきました。
自分から学校の話を聞いてみたり、Nちゃんと二人きりで買い物に出かけたり。
置いていかれたくないという気持ちが、父親なりの歩み寄りを生んだのかもしれません。

【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。