「車、出してくれるよね?」当たり前のように頼られる日々
都会で暮らす息子夫婦は、車を持っていません。
そのため、わが家に遊びに来ると、当然のように私たちが車を出すのが習慣になっていました。
「せっかく来たから、アウトレット行きたいな」
「あのスーパー、珍しいお菓子あるから寄りたい」
最初は孫の顔も見られるし……と、うれしくてつい応じていました。
けれど、回を重ねるごとに、気づけば私と夫は、まるで“足”のような存在に。
70代の夜の運転
特に、夜の運転は怖いのです。私はもう70代で、夫も同じ。目はかすむし、疲れも残るんです。
それでもお嫁さんは「お義父さん、まだまだ運転できそうですよね!」と笑いながら言い、息子も「ちょっとだけだから頼むよ」と悪気なく言ってくるのです。
気づけば、帰省のたびにあちこち連れ回され、こちらはぐったり。
でも、「もう無理」とはなかなか言えませんでした。せっかく来てくれたのに、気を悪くされたら……と思うから。
ついに本音がポロリ
そんなある日の夕方。
いつものようにお嫁さんから「あそこ寄っていいですか?」と言われたとき、私はつい口にしてしまいました。
「ごめんね、最近、夜の運転が怖くなってきたの。こっちも年だから、無理はできないのよ」と言ってしまったあと、空気がピリッとしたような気がして……。
でも、次に返ってきたお嫁さんの意外な言葉。
「えっ、そうだったんですか? 全然気付かずに、すみません!」
正直になるって、大事
次の帰省以降、息子夫婦はタクシーや公共交通を使うようになったのです。
「たまには家でゆっくりしよう」と、家で一緒に食事をする時間も増えました。
言いにくいことでも、言わなければ伝わらない。“いい顔”を続けていたのは、実は自分たちだったのかもしれない。
無理をして壊れる前に、正直に伝えてよかったと、心から思っています。
【体験者:70代・主婦、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。