子どもが大声を出さないか、商品を勝手に取ってカゴに入れないかなど気にすることがいっぱい!
でも筆者はあの日、人目を気にするなんてレベルじゃありませんでした。
まさかスーパーでこんなことになるなんて……!
突然の逃走、迷路と化すスーパー
正直、その日の買い物は「調子がいいぞ!」と思っていました。
幼い息子は、いつものように「これ買ってー!」とギャーギャー騒ぐこともなく、買い物は終盤。
今思えば、そこで少し気が緩んだ瞬間だったのでしょう。
「じゃあ今度のふりかけは何にする?」
と振り返った瞬間、息子の影がスッと消えていくのが見えました。
一瞬、何が起きたのか分かりませんでしたが、次の瞬間には「え?! いない!」と慌てて追いかけていました。
しかし、息子がどの方向に走ったのか、全く分かりません。
いつも見慣れたスーパーの陳列棚は、なぜか高くそびえ立ち、視界を遮る巨大な迷路のようでした。
店員さんもお客さんも巻き込む大捕物
「Aくん!!」
と息子の名前を必死に叫ぶ私。スーパーは人が数人しかいない状況だったものの、もし何かあったらと、心臓が跳ね上がりました。
すると「キャッキャ」と楽しそうな笑い声が聞こえてきました。どうやら息子は、逃げること自体が楽しくて仕方がない様子。しかし、こちらはヒヤヒヤしていました。
「Aくん! 止まって!!」
私の声は届かず、息子はお菓子コーナーをすり抜け、飲み物コーナーを駆け抜けていきます。その速さに、私の息は上がりっぱなしです。
ちょうど通りかかった店員さんが「こっちです!」と指をさし、知らないお客さんまでもが「あっちに行ったわよ!」と手を貸してくれました。
無邪気な笑顔に脱力する母
ようやく息子を捕まえたとき、彼は大きな瞳でニッコリと笑っていました。
「もう逃げないでよ……」
そう言いながら、私はその場にへたり込みそうになりました。怒鳴りたい気持ちと、ようやく見つけた安堵感でいっぱいでした。同時に、危険なことだったとしっかり言い聞かせなくては、と気持ちを引き締めました。
救いは人の優しさ
レジを済ませると、先ほどの店員さんが優しく声をかけてくれました。
「お疲れさまでした」
店員さんは笑ってくれましたが、きっと大迷惑をかけてしまったはず。他のお客さんたちも「元気いっぱいね」と、温かい目で笑ってくれました。
ご迷惑をおかけして申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、人の優しさが本当に心に染みました。
今日も母は、スーパーという名の戦場で、なんとか生き延びました。明日もまた、新たなミッションが待っているのでしょう。
【体験者:30代・筆者、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:K.Matsubara
15年間、保育士として200組以上の親子と向き合ってきた経験を持つ専業主婦ライター。日々の連絡帳やお便りを通して培った、情景が浮かぶ文章を得意としている。
子育てや保育の現場で見てきたリアルな声、そして自身や友人知人の経験をもとに、同じように悩んだり感じたりする人々に寄り添う記事を執筆中。ママ友との関係や日々の暮らしに関するテーマも得意。読者に共感と小さなヒントを届けられるよう、心を込めて言葉を紡いでいる。