長く一緒にいるパートナーの、ふとした変化。それが嬉しいことであれば良いのですが、時に「どうして?」という小さな疑問が、さざ波のように広がって、大きな不安になってしまうこともありますよね。今回は筆者の友人のエピソードをご紹介します。

私が変わった。……夫も変わった?

産後、なかなか体型が戻らず、鏡に映る自分の姿にため息をつく毎日。
そんな自分を変えようと始めたダイエットが思いのほか成功し、私は数年ぶりに昔の服が着られるようになりました。

友人から「すごく綺麗になったね!」と褒められるたびに、少しずつ自信も取り戻していきました。

夫の変化に気付いたのは、ちょうどその頃のこと。

それまでファッションに驚くほど無頓着だったのに、急に品の良いニットやジャケットを買ってきて着こなすようになったのです。

最初は「あら、素敵じゃない」と、私も素直に喜んでいたのですが……。

広がる疑念の影

私の喜びは徐々に不安へと変わっていきました。

「どうしたの、急にオシャレになって?」と聞いても、夫は「いや、まあ気分転換だよ」と曖昧に笑うだけ。

ファッションサイトを熱心に眺めている姿を何度も見かけるうちに、やがて私の心には黒い影が広がっていきました。

子どもが生まれ、私はもう女性として見られていないのかもしれない。
夫は外に目を向け、好きな人のためにオシャレをしているのでは……?

産後で不安定だった心は、日に日に疑念を大きくしていきました。

偶然目にしたスマホ画面

ついに、耐えきれずに「最近すごくオシャレだけど、誰かいい人でもできたの?」という冷たい言葉を夫にぶつけてしまった私。

夫は一瞬、ひどく傷ついた顔で私を見ると、「そんなわけないだろ」と呟き、部屋を出ていきました。

重い沈黙が流れるリビングで1人座っていると、充電ケーブルに繋がれたままの夫のスマホがふと目に入りました。
画面がついたままで、検索履歴がそのまま残っています。

検索履歴が語る真実

「妻が痩せて綺麗になった 幻滅されないか不安」
「きれいめ30代女性と歩いて恥ずかしくない服装」

検索履歴にあったのは、浮気の証拠ではありませんでした。
夫の切実な焦りと不安の言葉が並んでいたのです。

私の隣を歩くのにふさわしい男性でいようと、夫は努力を重ねていたのだと、やっと気付きました。

その夜、涙ながらに謝る私に、夫は優しく「謝らないで」と言ってくれました。

そして、私が「今のままでも十分素敵だよ。私はありのままのあなたが好きだから」と伝えると、安堵したように微笑んでくれました。

それ以来、私たちは以前より素直に気持ちを話せるようになった気がします。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。