帰省先の夏祭り。「二人でまわりたい」と義母が言ったとき、筆者の友人・美穂さん(仮名)は少し驚きました。普段はお互いに距離を取り、あまり深く関わってこなかった義母と過ごした時間は、思いがけず心に残る夏の思い出になりました。
突然の“二人きり”宣言に、戸惑う
美穂さんが家族で義実家へ帰省した日は、
ちょうど町内の夏祭りでした。
子どもたちは「やったー!」と大はしゃぎ。
にぎやかな空気に包まれる中、
到着してすぐ義母が口にしたひと言に、美穂さんは戸惑います。
「私、美穂さんと二人でまわってくるから」
これまで少し距離のあった義母と、突然二人きりに。
ぎこちない沈黙の中、
美穂さんは言われるままに歩き出しました。
“家族”として迎えられた、やさしい時間
屋台の前を通るたび、あちこちから
「よう来なさった!」と声がかかります。
義母は笑顔で応じながら、
「うちのお嫁さんなのよ」と、美穂さんを紹介してまわりました。
最初は戸惑っていた美穂さんも、自然と笑顔になっていき、
町との距離も、心の距離も、そっと縮まっていく気がしたそうです。
二人は参道を抜け、神社の奥にある小さな見晴らしのいい広場へと向かいました。