瀬戸内海にある実家は、昔ながらの風通しのよい家。
その名残か、母はいまだに「エアコンはぜいたく品」と思っているようで……。
でも今の暑さは“命にかかわるレベル”なのです。
「風があるから、いらないよ」
私の実家は、瀬戸内海に浮かぶ小さな島。
丘の上にある家は、窓を開ければ風が通り抜けるつくりになっていました。
昔は海風と扇風機だけで、夏を乗り切れたものです。
エアコンは「ぜいたく品」という感覚があり、使っている家はほとんどありませんでした。
今でも、母は変わらず言います。
「風が通るから大丈夫」「昔はエアコンなんて無かったんだから」
気温も時代も、もう“昔”じゃない
近年の気温は、40度近くになる日も珍しくありません。
少し動いただけで汗が止まらず、立っているだけで体力を奪われる。
そんな中でも母は、窓を全開にし、扇風機でしのごうとします。
冬場の暖房用にエアコンも購入したのに「電気代がもったいない」と言って使おうとしません。
「今は違うよ。昔よりずっと暑くなってるんだから」
私はそう伝えてきたけれど、母の意識はなかなか変わりませんでした。
「ニュースになっちゃうよ!」
ある夏の日、帰省した私を出迎えたのは、うちわで仰ぐ母の姿。
家の中は熱がこもり、立っているだけで汗がにじむような暑さに、思わず言いました。
「エアコン、つけよう?」
それでも母は「今日も扇風機で十分よ。電気代も高いし」と笑うばかり。
その瞬間、私はたまらず声を上げました。
「つけないと、死んじゃうよ! ニュースになっちゃう!!」
今と昔の気温の違い、年齢による体の変化、熱中症のリスク。
一つずつ、母の目を見て説明しながら、私は必死でした。
「エアコンの中で、水分もちゃんととって過ごしてくれないと、安心して仕事に行けないよ」
ようやく、母はしぶしぶエアコンのリモコンに手を伸ばしてくれました。
命より大切な節約なんてない
エアコンは、もはやぜいたく品ではありません。
命を守るための“装備”です。
“もったいない”という精神は、大切だと思います。
でも、命より大事な節約なんて、ないと思うのです。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。