子どもの頃は生活することの大変さが分からないゆえに、両親を心無い一言で傷つけてしまうことも……。しかし、成長する中で苦労しているうちに、自分を育ててくれた親に感謝の気持ちがわくものです。
今回は、筆者の知人A子と娘のB香の心温まるエピソードを紹介します。

娘に「うちは貧乏」「〇〇は安い」と言われるのがつらかった

私の知人A子はパートで働き、家計を支えています。パートの収入は10万円以上あるものの、食費や消耗品、車の維持費、娘・B香の塾代などを支払えばほとんど手元に残りません。また、老後のために、少しでも貯蓄したいという思いも……。

一方、娘のB香は自由に使えるお金が中高生にして母親よりも多くありました。A子は娘に平均程度のお小遣いしか渡していなかったものの、お年玉や親戚が年に数回くれるお小遣いなどでそこそこのお金がありました。百貨店のコスメコーナーでハイブランドのリップを買ったり、駅ビルで1万円以上のワンピースを買ったり、友人たちとおしゃれカフェで食事を楽しんだり。

B香は自由を謳歌する一方、A子が安い化粧品を購入したり、スーパーで惣菜を「高い」と言って買い控えたりすると、どこか見下すような発言をしていました。「お母さん、いい年なのに、そんな安い化粧品使うの? 年齢を重ねたらよいものを使わなきゃだめみたいだよ」「このお弁当、他のより200円くらい高いだけじゃん」などという何気ない一言に傷つきました。それゆえに、娘の前では購入した化粧品を出さないようにしたり、値引き商品を探したりするのは控えたりもしていました。

大学進学を機に一人暮らしをはじめたB香の成長に“涙”

B香は大学生になって一人暮らしをすると、生活していくことの大変さに気付きます。バイト代は数万円あるし、仕送りも10万円ほどもらっているものの、食品や消耗品を購入すると手元にお金はほとんど残りません。

実家で暮らしていたときは、お弁当の数百円の差や野菜の数十円の差を意識しなかったB香。しかし、自分もスーパーで買い物をするようになると、リーズナブルな食品を見つけたときに感じるうれしさに気付きました。

また、高校時代はデパコスを年に数回購入していたものの、今はデパコスにこだわらず、安くて、質の高い化粧品を探して購入しているそうです。

A子は娘の成長を夏休みの帰省で実感し、おどろきとともに喜びを感じました。娘と一緒にスーパーで買い物をしたり、ドラッグストアで化粧品を探したりする時間は、数カ月前までは考えられなかったほどおだやかなものでした。

そして、A子が娘の初めての帰省で一番うれしかったのは、自分と夫にパジャマをプレゼントしてくれたこと。B香は節約して貯めたお金で、両親に着心地のよいパジャマをこれまでのお礼も兼ねて、お土産としてくれました。

【体験者:50代・女性パート、回答時期:2025年7月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:太田あやこ
大学でジェンダーや女性史を学んだことをきっかけに、専業ライターとして活動中。自身の経験を活かしながら、幅広い情報収集を行い、読者に寄り添うスタイルを貫いている。人生の選択肢を広げるヒントを提供し、日々の悩みに少しでも明るさをもたらせるよう、前向きになれる記事づくりに取り組んでいる。