突然の体調不良
その日、私は夫、娘と共に電車に乗っていました。
すると突然夫が気分の悪さを訴え、今にも戻してしまいそう、と真っ青な顔で顔を覆っています。
なんとか次の停車駅まで持ちこたえ、降りるやいなや夫は倒れるようにベンチに座り込み、うずくまってしまいました。
暑い日だったので、熱中症かな?
さてどうしよう……
近くに自販機は見当たらず、駅員さんを呼ぼうにもこの状態の夫を一人残していくのは心配。
辺りを見回しながら考えていると、
救いの手
「これ、飲ませてあげて」
新品のペットボトルの水をこちらに向けて差し出す男性が。
「え、いいんですか? すみません、ありがとうございます!」
突然の申し出に驚きながらもお礼を言って水を受け取ると、男性は軽く手を挙げて颯爽と行ってしまいました。
そのスマートで自然な立ち振る舞いに感激しながら、早速私は夫に水を渡しました。
水分を摂って落ち着いたのか、夫の様子はだいぶ回復したように見えます。
よかった……少し安心したその時、
「大丈夫ですか? 駅員さんを呼んで来ましょうか?」
と女性が声をかけてくれました。
再びいただいた温かい言葉に、私はもう胸がいっぱいでお礼の言葉が詰まってうまく出てこないくらいでした。
優しさは連鎖する
今の時代、他人に関心の薄い世の中だと思っていましたが、この時たくさんの優しさと親切に触れ、驚きと感謝の気持ちでいっぱいでした。
困っている人を見かけたら、ためらわずに声をかけられるようになりたい、と改めて思った出来事です。
【体験者:40代・筆者、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:田辺詩織
元医療事務、コールセンター勤務の経験を持つ在宅ワーカー。文学部出身で、文章の力で人々を励ましたいという思いからライターの道へ。自身の出産を機に、育児ブログを立ち上げ、その経験を生かして執筆活動を開始。義実家や夫、ママ友との関係、乳幼児期から中学受験まで多岐にわたる子育ての悩みに寄り添い、読者が前向きになれるような記事を届けている。