「思い通りにいかないこと」って、なるべくなら避けたいですよね。でも、子育て中はそれが日常茶飯事になります。特に、イヤイヤ期真っ只中の子どもと一緒だと、予想外のハプニングがつきもの。今回は友人の体験談をお届けします。

初めての家族旅行

去年の夏、3歳の息子を連れて、初めての家族旅行に出かけました。

もともと几帳面な性格の私は、この日のために何週間も前からリサーチを重ね、完璧な「旅のしおり」を作成。

キッズプレートが自慢のレストランや、子どもが喜ぶ動物のショー、キャラクターのテーマパークなど、全ての予約を抜かりなく済ませ、サービスエリアで食べたいものまでリストアップしました。

「これだけ綿密に計画を立てたんだから絶対に大丈夫!」と、旅行前から自信満々だったのですが……。

イヤイヤ期の破壊力に完敗

しかし、3歳の「イヤイヤ期」という最強の敵の前では、私の計画など紙くず同然でした。

渋滞で移動は遅れ、やっとの思いでたどり着いた牧場では、楽しみにしていたポニーを見るなり「こわい!」と大絶叫。

そこからはもう、何をしても「イヤ! イヤ!」の連発です。
車内に響き渡るのは息子の泣き声と、私たちの深いため息だけ。

心はすっかり折れ、夫と顔を見合わせ「もう、ホテルに行こうか……」と、全ての予定を諦めたのでした。

偶然見つけた小さな砂浜

予定をすべて諦め、息子を昼寝させるために、気まぐれに海沿いの道を走っていた時です。

ふと目に留まったのは、カーナビにも載っていない細い脇道。
何気なくハンドルを切ると、その先には観光客のいない、名もなき小さな砂浜が広がっていました。

車を降りると、さっきまで不機嫌だった息子が、まるで水を得た魚のように笑いながら走り回り、砂遊びを始めたのでびっくり!

息子の楽しそうな姿を見て、私たち夫婦もようやく肩の力がふっと抜けていくのを感じました。

計画外の景色がくれたもの

しばらくすると、言葉を失うほど美しい光景が私たちの目の前に広がりました。
遮るものが何もない水平線に沈んでいく、燃えるように真っ赤な太陽。

コンビニで買ったお菓子を頬張りながら、家族3人でただその景色を眺めていた時間は、言葉にできないほど穏やかで、心が満たされていくのを感じました。

あれから1年。
4歳になった息子は、楽しみにしていた水族館のことも豪華なホテルのことも忘れてしまいましたが、今でもふと、「ママ、また行きたいね。あの、おひさまが大きくて真っ赤だったところ!」と言います。

計画通りにはいかなかったけれど、あの日の夕焼けは息子の心にくっきりと焼き付いているのだと思います。
私にとっても、かけがえのない最高の旅になりました。

【体験者:20代・女性会社員、回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。