しかし、退職後に待っていたのは──。
今回は筆者の知人から聞いた、誰もが陥る可能性のある夫婦の後悔エピソードをご紹介します。
海外旅行が夢
私と夫は出会ってから40年もの間、とにかく仕事に打ち込み続けてきました。
結婚から数年経ち2人の娘を授かってからというものの、子育ても新たな日常生活の一部となり、夫婦で協力し合いながら頑張ってきたのです。
『退職して子育ても一段落したら2人でヨーロッパを周遊しよう』
それが私たちの長年の夢でもありました。仕事や育児や家事でとにかく多忙な日々。
それでも、たまに図書館で借りたガイドブックを眺めては、
「この街、歩いてみたいわね」
と語り合っていたのですが……。
無念の決断
娘たちも成人し結婚。私たちも長年勤めあげた会社を退職する年をようやく迎えました。
ようやく長年の夢を叶えられるかと思いきや、ここにきて夫の体調が思わしくなくなってしまったのです……。
医師から、長時間の飛行機移動や時差ボケに耐えられない、と診断されたときには、目の前が真っ暗になりました。
そうして私たちにとって念願だった【夢の海外旅行】は断念せざるを得なくなってしまったのです。
後悔
申し訳なさそうにする夫をなだめつつも、正直なところ、夢を目前にしての試練に『どうしてこのタイミングなの?』と思わずにはいられなかった私。
夢を叶えられなくなった悔しさと喪失感が押し寄せましたが、それ以上に自分への怒りが湧きました。
『なぜ、元気なうちに行かなかったのか』
『なぜ【そのうち】ばかり口にしていたのか』
それから海外旅行は一旦諦め、近くの温泉地巡りや日帰り旅行をすることで発散させていました。
【いつか】から【今】へ
それでも『まだチャンスはあるかも』と思っていた矢先、夫の認知症が発覚!
ますます海外旅行など夢のまた夢になってしまいました……。
2人で過ごせる今がどれほど貴重かを、ようやく実感できるようになった私たち。
“【いつか】ではなく、【今】を大切に生きること”
それが私たち夫婦にとって、一番の学びとなっています。
小さな日々の喜びを分かち合い、互いの存在に感謝しながら過ごす時間こそが、私たち夫婦にとって何よりも貴重な宝物となっています。
【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。