親の心子知らずとはよく言ったもので……。筆者の知人Aさんは兄の結婚を機に、母の優しい気持ちに気がつきました。兄嫁を全然悪く言わない母の真意は、今でもAさんの心の中にずっと残っているそうです。自分の息子が結婚を考えるような年になった今も、Aさんが忘れられない母の教えとはどのようなものだったのでしょうか。

兄の結婚、妹の心中は?

Aさんが20代だった頃、兄の結婚が決まりました。仲が良かった兄の結婚が嬉しくもあったけど、寂しくもあったAさん。

兄嫁は兄が選んだだけあって素敵な人でしたが、小姑という立場になったAさんは厳しい目で見てしまいます。どこかダメなところがあるのではないか、そんなところを見つけてやろうという気持ちに自然となってしまうのです。

「ダメなところはないかな?」という目線で見れば、誰でも何かしらは見つかるでしょう。Aさんも兄嫁の気になる点を見つけては母に告げ口をしていました。

兄嫁を決して悪く言わない母

兄嫁の悪いところを母に告げ口するAさんでしたが、母はそんなAさんの悪口には乗ってきませんでした。

母も大事な息子を取られたという立場のはずなのに、どうして一緒になって兄嫁の悪口を言ってくれないのだろうと不思議に思ったAさん。

「どうして兄嫁を悪く言わないの?」と母に聞いてみると、母はこう答えました。

「息子のお嫁さんのことをとやかく言うのは、好きじゃないの。私からすればなんの問題もない素敵なお嫁さんだし、夫婦のことは夫婦で考えるものよ。それに、もしあなたが嫁ぎ先で嫌なことを言われたりしていたらって考えるとそんなことできないのよ」

「だからあなたも、そんなふうに言うのはやめなさい」とピシャリと言われてしまったのでした。

母の行動に隠された真意

母は兄と嫁の二人を心から信頼し、万が一何か気になることがあったとしても余計な口は出さないと決めているようでした。
さらに、人にしたことは、いずれ自分に返ってくる。だから、もし母が兄嫁の悪口を言えば、Aさんが結婚した時に嫁ぎ先で悪口を言われてしまうことになるかもしれない。
そう考えたから母は、兄嫁の悪口を一切言わなかったのでした。

何も考えず嫌な目線で兄嫁を見てしまい、悪口を母に伝えていたことをAさんは恥ずかしく感じました。

そして、母の行動に込められた思いに気づかされ、自分も母のように生きていこうと思ったのでした。母の思いを聞いて以降、Aさんは誰かのことを悪く言うことをやめたのです。

姑になったAさん

兄の結婚から時が経ち、Aさんも結婚をしました。母のおかげかAさんは義実家に恵まれ、良好な付き合いをすることができています。

娘と息子ができたAさん。2人はすくすく成長し、いよいよ息子が結婚をすることになりました。

「会ってほしい人がいるんだ」

そう言う息子の言葉に、Aさんは結婚相手のお嬢さんの悪口は絶対に言わないようにしようと決意を固くしました。

大切な息子が決めた人のことを私も信じよう。
そして、やはり息子が連れてきたお嬢さんはとても素敵な女性でした。
自分がしたことが自分に返ってくるならまだしも、自分の大切な人に返ってきたら悔やんでも悔やみきれません。大切な娘もいる今、母の言葉はより深くAさんの心に響くのでした。

【体験者:50代・女性主婦、回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:安藤こげ茶
自身も離婚を経験しており、夫婦トラブルなどのネタは豊富。3児のママとして、子育てに奮闘しながらもネタ探しのためにインタビューをする日々。元銀行員の経験を活かして、金融記事を執筆することも。