義姉一家がやってきた
A子さんは夫の実家近くに家を建て、家族3人で暮らしていました。
赤ちゃんが生まれ、初めての育児に右往左往しながら、新米ママとして慌ただしくも幸せな毎日を送っていたそうです。
そんな中、義姉一家が近所に引っ越してきたのをきっかけに、A子さん宅へ訪問してくるようになりました。
「赤ちゃん大変でしょ?」「近くに来たから寄ってみたの」
最初はありがたいと思っていたA子さん。けれどその訪問は、徐々に“日常”を侵食していったのです。
生活の境界線が崩れていく
最初はちょっと寄ってお茶を飲むだけだった義姉一家。
それがいつの間にか夕飯を食べ、洗濯物を乾かし、お風呂まで使うようになっていました。
そんな日が続くある日の夕方。
「お風呂が沸きました」——風呂沸かし機能の音声が響き、A子さんは生後3か月の息子を一番風呂で入浴させようと準備を始めました。
すると義姉が当然のように言ったのです。
「仕事疲れた〜。先にお風呂入るね〜」
家族4人で浴室へ向かう義姉一家に絶句したA子さんは、その背中を見送るしかありませんでした。
“みんな仲良し”は免罪符?
絶句するA子さんをよそに「今日はお風呂早いね〜」とリビングでくつろぐ義姉一家。
義実家ではなく、自分たちの生活空間に毎日踏み込まれ、「ここ、私の家なのに」と、A子さんは心の中で何度もつぶやいていたそうです。
「もう無理かも」そう感じたのは、一度や二度ではありませんでした。勝手に洗濯をして乾燥機を使い、子どもたちもリビングを我が物顔で走り回る。
このままでは、息子の生活に影響が出てしまう。
そう思い、A子さんは夫に相談しますが「いいじゃん、みんな仲良くて楽しいし」と、軽くあしらわれてしまいました。
ようやく気づいた“距離感”
そんなある日、夫の異動が決まりました。
支店勤務が決まり、A子さんたちは家を賃貸に出し、新天地へ引っ越すことに。
落ち着いた暮らしが戻り、ようやく夫も気づいたようです。
「家族だからって、何でも許されるわけじゃないんだな」
“仲がいい”を盾にして、誰かの暮らしを壊してはいけない。
家族だからこそ、適切な距離感が大事だったと。
A子さんは今、穏やかな生活の中でそう実感しているそうです。
【体験者:30代・パート、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。