「がんばろう」から抜け出せない娘
娘の小学校では、算数の授業が3つのクラスに分かれています。「できる」「ふつう」「がんばろう」。
子どもの理解度に合わせて無理なく学ぶ仕組みらしく、最初は「いい取り組みだな」と思っていました。
でも、学年が上がっても娘はずっと「がんばろう」クラス。
宿題を一緒に見ていても、理解できる日もあれば、びっくりするような間違いをする日もあって、私はだんだん焦るようになっていきました。
「まあそのうち上がるよね」なんて楽観していたけれど、変わらない現実。
それどころか、「このまま“がんばろう”から上がれなかったらどうしよう」と、じわじわと不安が募っていきました。
授業参観で目の当たりにした“レベルの差”
そんなある日、夫婦で算数の授業参観へ。
娘はやっぱり「がんばろう」クラス。集中しているようにも見えるけれど、発言もせず、淡々と問題を解いています。
「できる」クラスを見に行くと、子どもたちは別の解き方を提案したり、発展問題に挑戦したりと、まるで別世界。
夫の一言に怒り爆発
参観の帰り道、思わず夫に言いました。
「娘、ずっと“がんばろう”クラスだよね……。ちょっと心配になってきた」
すると夫はあっさりこう言ったのです。
「大丈夫でしょ。勉強できなくたって、生きていけるって」
私はその言葉に、怒りがふつふつと湧いてきました。
「え? 何が大丈夫なの? 大丈夫って言葉、無責任に聞こえるんだけど!」
夫は黙っていましたが、私の気持ちは収まりませんでした。
私は娘の“がんばろう”に付き合って、何度もやり直して、ヒントを出して、イライラして、それでも投げ出さずにここまでやっているのに。
娘の言葉でハッとした
でもその夜、娘が言ったのです。
「授業参観緊張した〜。がんばろうクラス、いいでしょう。わかんなくても、先生がちゃんと待ってくれるんだよ」
その言葉を聞いて、ハッとしました。
“がんばろう”は恥じゃない。むしろ、娘なりのペースで「わかる」喜びを積み重ねている場所なんだ。
大切なのは、「わかった!」の積み重ねを信じること。それが親にできるサポートだと気づいた夜でした。
【体験者:30代・会社員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。