食事ひとつをとっても、地域によって食器の並べ方や食べ方が違うこともありますよね。旅行に行ったときなどに「この地方ではこうするのか」と気づくこともあります。今回はそんな地域の食文化で驚いた経験のある筆者の知人、Cさんのお話です。

旅先で……

Cさんは関西出身の旦那さんと結婚し、ずっと関東で暮らしています。

あるとき関西にある義実家の用事のついでに、旦那さんに案内をしてもらって2人でゆっくり関西旅行をすることになりました。

法事や結婚式などで関西に行くことはあったものの、本格的な旅行は初めてでCさんはワクワクしていました。
「美味しいもの沢山食べようね! まずはお好み焼き食べたいな」
本場のお好み焼きを前から一度食べてみたかったCさんは、旦那さんにそうリクエストしました。

「お好み焼き食べたいんやったら、ええ店知ってるで! 連れてったるわ!」
義実家で会った義姉がそう言ってくれたので、夜にCさん夫婦と義姉夫婦でお好み焼き屋さんに行くことになりました。

お好み焼きのマナーとは

「わあ、美味しそう!」
お好み焼きが運ばれてくると、義姉に「Cさん切り分けて」と言われました。
「はーい!」
わくわくしながらCさんがお好み焼きを切り分けると、何故か義姉の顔色が変わりました。
「ちょっと何その切り方! ありえへん!」
「え、どうしてですか……」
Cさんが慌てて他のお客さんを見ると、みんなお好み焼きを格子状に切っているのが見えました。
「なるほど」

Cさんはお好み焼きをピザのように切り分けていたため、これで義姉が怒っているのだと理解しました。
「関西ではな、お好み焼きは格子切りにして食べるんが普通やで!」
大声で怒る義姉を見て、ちょうどドリンクを持ってきてくれた店員さんが諭すように言いました。「そんなに怒らんくても。切り方は自由ですよ、美味しく食べて頂ければ」
店員さんにたしなめられて義姉は恥ずかしそうに黙りこみました。

せっかくの旅行なのに、まさかこんなことで険悪な雰囲気になるとは思わなかったCさん。今後義姉と食事に行くときは、無用な争いを避けるため、なるべくお好み焼き以外を選ぼうと決めたそうです。

地域によって異なる食文化は確かにありますが、せっかく地元の美味しいものを食べるのですから、みんなで楽しく食べたいですよね。食文化の違いは、時に驚きや戸惑いをもたらしますが、それも旅の醍醐味。予期せぬ出来事から、新たな発見や学びが得られることもあります。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。