「相変わらずこの店はマズい!」
すっかり酔っている常連さんはまた大きな声でマズいと騒ぎ出しました。Nさんがその手元を見ると、せっかくの料理に大量の醬油をかけているのが見えました。
「そりゃなんでもマズくなるよ、そんなに醤油かけたら……」
マズい発言に他のお客様がざわつきだしたこともあり、Nさんが常連さんに注意しようと口を開いた瞬間、厨房から従姉妹がさっと出てきました。
「もうすぐタクシーが来ますので、どうぞお帰り下さい」
「え?」
いつもと同じにこやかな表情のまま、従姉妹は常連さんに帰って欲しい旨を伝えました。
「本日のお代金は結構です。でも、もう来ないでください」
「え、そんなあ! マズいって言ったの怒ってるの? 酔っぱらいの冗談じゃないのー!」
常連さんは親し気に従姉妹に言いましたが、従姉妹は一蹴。
「酔っているからといって、他のお客様にご迷惑をおかけする行為は許されません」と毅然とした態度で返しました。
最終的には従姉妹自ら常連さんの手を引き、店から連れ出してタクシーに乗せてしまいました。
「大丈夫なの?」
Nさんが尋ねると、従姉妹はスッキリとした顔で答えました。
「常連さんだけど、もう我慢の限界! せっかく作ったものを無駄にされたりマズいって言われたり。やっと出禁って言えて良かったわ」
その後常連さんは数回お店に謝罪に訪れましたが、従姉妹は頑として聞き入れなかったそうです。
酔っぱらうと明るくなったり、おしゃべりになったりと印象が変わってしまう人は少なくありません。しかし人に迷惑をかけたり、不快にさせたりするほどの泥酔は良いお酒とは言えませんね。
【体験者:20代・女性アルバイト、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:齋藤緑子
大学卒業後に同人作家や接客業、医療事務などさまざまな職業を経験。多くの人と出会う中で、なぜか面白い話が集まってくるため、それを活かすべくライターに転向。現代社会を生きる女性たちの悩みに寄り添う記事を執筆。