言い合いのあとに残った、苦い沈黙
小学三年生の息子G太と、最近よくぶつかるようになっていました。「宿題やったの?」「ゲームは1時間までだよね?」毎日のように繰り返す注意に、私自身も疲れがたまっていました。
ある日の夕方、テレビの音が大きかったので「少し静かにして」と言っただけなのに、G太が突然怒鳴ったのです。「ママなんて、いなくてもいい!」
頭が真っ白になった私は、思わず「そんなこと言うなら、本当に出ていくから!」と大人気なく言い返してしまいました。
その夜、私たちは会話もなく、背を向けたまま眠りました。怒りよりも、自分の未熟さと息子の寂しさが重なって、心がズキズキと痛みました。
朝の手紙に込められた気持ち
翌朝、早く目覚めてキッチンへ行くと、ダイニングテーブルの上に小さな紙が置かれていました。
「ママへ きのうはごめんなさい。ママがいないとさみしいです」
その言葉を読んだ瞬間、涙が止まりませんでした。息子なりに考えて、勇気を出して書いたのだと思うと、胸が締め付けられるような気持ちでした。
しばらくして息子が起きてきたとき、私はすぐに声をかけました。「G太、手紙ありがとう。ママも昨日は言いすぎた。本当にごめんね」
ぎゅっと抱きしめて、心をつなぐ
すると、G太は少し照れながら「僕も、ごめんなさい」とぽつり。私は思わずぎゅっと抱きしめました。抱きしめ返してくれた小さな手の温かさに、たまらなく愛おしさを感じました。
子どもとの衝突はつらいもの。でも、ぶつかったあとにお互いの気持ちを伝え合えることで、もっと深い絆が生まれるのだと思います。
あの朝の手紙は、今も私の財布に入っています。自信が揺らいだとき、それを見れば、「大丈夫、ちゃんと伝わってる」そう思えるのです。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。