悪気のない一言
私は数年前に会社を辞めて、今はフリーランスのWEBデザイナーとして働いています。
夫は会社員で、私の仕事を『好きにやってみたらいいよ』と、いつも応援してくれます。
ある週末、私たちは夫の友人Cさん宅で開かれるホームパーティーに招かれました。
Cさんは大手メーカーで働く営業マンで、社交的なタイプ。
お酒が進むにつれ、饒舌になったCさんは、にこやかに私に言いました。
「フリーランスかー。楽そうでいいよね」
内心モヤッとしつつも、私は「場所を選ばずに働けるのはメリットですね」と笑顔で返しました。
仕事を見下され……
しかし、Cさんの言葉はさらに続きました。
「でもさ、正直A子さんの仕事って、そんなに大変な仕事じゃないんじゃない? WEBデザイナーって、スマホとかでチャッチャと作るだけでしょ?」
一瞬、悔しさと悲しさで、頭が真っ白に。
必死に努力してきた日々を、全否定されたような気持ちでした。
夫が見せた意外な一面
言い返せずに唇を噛みしめていると、隣で黙っていた夫が、ゆっくりと口を開きました。
「C君、それは大きな間違いだ。A子の仕事、めちゃくちゃすごいんだぞ」
“え……?”驚く私をよそに、夫はスマホを取り出すと、私が手がけたサイトを次々とCさんに見せ始めました。
「これなんて、クライアントの要望を完璧に理解して、使いやすさと美しさを両立させてる。SEO対策もバッチリでアクセス数もアップしたし。こっちのサイトは業界紙でデザイン賞も受賞したんだ」
そこまで私の仕事に興味があるとは思っていなかった夫が、こんなにも細かく見てくれていたなんて。
驚きで、声も出ませんでした。
仕事への誇り
夫の熱弁は止まりません。
「『誰でもできる』? とんでもない! A子はデザイン、コーディング、マーケティング……あらゆるスキルを駆使して最高のサイトを作ってる。プロの仕事って、そういうもんだろ?」
Cさんは画面と夫の顔を交互に見比べ、真っ赤な顔で「知らなかった。A子さん、すごいな。本当に失礼なことを言ってすみませんでした」と深々と頭を下げました。
恐縮しながらも、私の胸の奥からはじんわり嬉しさが込み上げてきました。
1番近くに、私の仕事を誰よりも認め、誇りに思ってくれる最高のパートナーがいた。この時の夫の言葉のおかげで、私は自分の仕事を、前よりもっともっと好きになれました。
【体験者:30代・女性・自営業、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。