意見の食い違い
高校生の娘を持つ私は、少し前まで夫との間に見えない壁を感じていました。
原因は、中学3年生の娘の進路です。
英語が得意な娘は、英語に特化した学科と、英語以外のことも幅広く学べる普通科の、どちらを選ぶかで悩んでいました。
私は「専門的なことは大学からでも遅くない。まずは普通科で視野を広げたほうがいい」とアドバイス。
しかし、夫の意見は真逆でした。
「やりたいことがあるなら、早く始めたほうがいいに決まってる」と、専門学科への進学を強く勧めたのです。
同じ方向を向いてくれない夫への苛立ち
娘を想う気持ちは同じはずなのに、なぜ夫は同じ方向からサポートしてくれないのだろう……と、私は不満に思っていました。
「大事な時期なんだから、夫婦で足並みをそろえて娘を支えてあげたいだけなのに」
そう思うほど、夫が“非協力的な存在”に思えてきて、気づけば不機嫌な態度をとってしまう自分がいました。
私のほうが、娘の将来を現実的に考えている。そんな驕りもあったのかもしれません。
娘の一言がくれた気づき
そんなある日、リビングで悩ましげな顔をしていた娘が、ポツリとこうこぼしました。
「パパとママの意見、どっちも聞けてよかったな」
思わず「え?」と聞き返した私に、そばで聞いていた夫が静かに言いました。
「俺たちが違うことを言うから、自分で考えるだろ? 親の意見が1つしかなかったら、それに従うしかないって思うかもしれない。自分で選ぶって、大事だと思うんだよ」
その言葉に、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。
違うからこそ豊かになる、家族というチーム
私はずっと、娘に“正解”を与えようとしていました。
でも、夫は違いました。
娘自身が考え、悩み、答えを出すための“選ぶ自由”を与えようとしていたのです。
意見が違うということは、娘にとって“選べる幅”だったのだとようやく気づきました。
それ以来、夫への見方が少し変わりました。
意見が異なることは、対立ではなく、豊かさなのだと気づけたのです。
家族の中に「色々な視点」があることは、子どもにとってきっと幸せなこと。
これからも、娘にはさまざまな大人の考えに触れながら、自分だけの道を見つけていってほしいと、心から願っています。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。