Tシャツ沼にハマった夫
なおさんの夫は、筋金入りのTシャツコレクター。
ご当地Tシャツに始まり、最近はビンテージやロックバンドTにも手を出し、1枚数万円するような代物でも平然と手に入れる夫。
「Tシャツで家計が圧迫されるなんて。こんなはずじゃなかった!」と、なおさんは嘆くが、夫本人はお構いなしでした。
我慢の限界、ついに爆発
箪笥はすでに満杯、収納ケースも夫のTシャツで埋まり、床には服の山ができていました。歩くたびに踏みそうになり、掃除もままならない状態。
それでも夫は「どれも大事なんだ」と言って手放そうとはしません。
そんなある日、また新しいTシャツがリビングに放置されているのを見て、ついに爆発しました。
「もういい加減にしてよ! 家計も、家の中も、もう限界なの!」
普段は滅多に声を荒げないなおさんの怒りに、夫も驚いた様子でしたが、
「俺の趣味に文句言うなよ、理解が足りないな!」と声を荒らげ、口論は深夜まで続きました。冷めきった空気が、なおさんの心まで冷やしていきました。
ワンコがくれた意外な変化
「理解が足りない」と怒っていた夫ですが、なおさんの「犬と暮らしたい」という長年の願いにも、ずっと首を縦に振りませんでした。「Tシャツが荒らされる」「毛がつく」と、顔をしかめていたのです。
それでも諦めず、ついに迎えた保護犬・茶々丸。
その直後、夫の態度は一変しました。「この部屋に入るな」「よだれが!」と神経質だったのは数日だけ。やがて「茶々丸〜、これ似合うかな?」と笑顔を見せるようになったのです。
驚いたことに、Tシャツはペアで2枚ずつ購入するように。犬用もおそろいにしたいらしく、「また茶々丸に仕立てて」と、裁縫が得意ななおさんに当然のように頼みます。
なおさんは呆れつつ、ミシンを手に取りました。
ミシンの音がつなぐ日常
最近では、散歩仲間から「かわいいペアルックですね」と声をかけられることも増えました。夫はまんざらでもない様子で、満面の笑みを浮かべています。
茶々丸とおそろいの服を縫う時間が、なおさんにとって小さな楽しみになりました。以前のような夫に対しての怒りや諦めの日々ではなく、穏やかに夫と笑っている日が増えている日常。
ミシンの音が、今では夫婦の時間をつないでくれているそうです。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2024年12月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。