なかには「迷惑だ」「そこをどけ」などと思いやりのない言葉をぶつけてくる人もいるようです。
今回は筆者の友人から聞いた、子連れでバスに乗車したときのお話をどうぞ。
ベビーカーと共にバスへ
これは、生後8ヶ月の息子をベビーカーに乗せて買い物した帰り、バスに乗ったときの出来事です。
ベビーカーマークのついたバスに乗車したものの、車内は少し混み合っていました。
出入り口の邪魔にならないよう、指定のスペースでベビーカーを折りたたみ、息子を抱いて静かにしていたつもりだったのですが......。
心ない言葉
途中の停留所で乗ってきた高齢女性が、私のベビーカーと息子を見るなり声を荒らげて文句を言ってきました。
「バスにベビーカーなんて非常識ね」
「こっちは足が悪いのに!邪魔よ!」
その怒鳴り声に、車内は一瞬で静まり返りました。
周囲の視線が一気に集まり、私は驚きのあまり声が出ず、息子も驚いたのか泣き出してしまったのです。
すると女性は、息子を迷惑そうに睨みながら追い打ちをかけてきました。
「赤ちゃんを早く泣きやませなさい!」
「うるさくて仕方ないわ」
全員の理解を得ることは難しいとわかっていながらも、やはり心ない言葉をいきなりぶつけられると私もつらいものがありました。
救世主
とっさに謝ろうとしたそのとき、前方から運転手の声が響きました。
「赤ちゃんもお母さんも大切なお客様です」
「乗車ルールの範囲内ですので、どうぞご安心ください」
それから運転手は、にこりとこちらを微笑みながらこう続けました。
「赤ちゃんが泣くのは元気な証拠です」
「皆さん、ぜひご協力くださいね」
すると、何人か『そうだよね』と頷いてくれ、空気がふわっと和らぎました。
女性もバツが悪くなったのか、それ以上は何も絡んでこなくなったのです。
ありがとう
助けてくれた運転手の背中を見つめながら、涙が出そうになるのをこらえた私。
「子育て、がんばってくださいね」
「いつでもご乗車お待ちしております」
降車時、そう囁いてくれた運転手の声が、今も胸に残っています。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:一瀬あい
元作家志望の専業ライター。小説を志した際に行った女性への取材と執筆活動に魅せられ、現在は女性の人生訓に繋がる記事執筆を専門にする。特に女同士の友情やトラブル、嫁姑問題に関心があり、そのジャンルを中心にltnでヒアリングと執筆を行う。