ケーキ屋さんでの出会い
懇意にしているケーキ屋さんのご主人と、お店に行くたびによく世間話をしています。
そのお店はご主人がひとりで切り盛りしていて、2階は喫茶スペースになっています。
ある日、お店の2階から上品そうな高齢の女性が降りてきました。
私が「こんにちは」と声をかけると、にこやかにあいさつを返してくれました。
話してみると、その方はご主人のお母様で、年齢はなんと80歳を過ぎているとのこと。驚いたのはその次の言葉です。
「これからピアノ教室なのよ」と言うのです。
ピアノ教室!? そのひと言にびっくり
「ピアノを習ってるんですか? すごい!」と、思わず声を上げてしまいました。
私も子どものころに長くピアノを習っていたのですが、習い事というと「子どもがするもの」というイメージがあったからです。
でもそのお母様はさらりと、「70歳になってから始めたの。先生も優しいし、楽しいのよ」と話してくれました。
年齢なんて関係ない、そう語っているような自然な笑顔でした。
「楽しいのよ」の笑顔に感動
「今はね、これを練習してるのよ」とバッグから楽譜を取り出して見せてくれ、指の動かし方やリズムの取り方など、うれしそうに説明してくれました。
私はその姿に、「なんて素敵なんだろう!」と感動してしまいました。
それから少しおしゃべりをしていると、「もうレッスンの時間だわ。それじゃ、いってきまーす!」と明るく手を振って、ピアノ教室へ向かうお母様。
80歳を過ぎてなお、新しいことに挑戦し、学びを楽しむ姿は、本当にまぶしく見えました。
新しいことに挑む姿に心が動いた日
いくつになっても、学ぶことを楽しめるって素晴らしい。
あの日の出会いを通して、「もう遅い」なんて言葉は自分の限界を決めてしまうだけなんだな、と強く感じました。
私もあんなふうに歳を重ねたい。そう思わせてくれた、忘れられない出来事でした。
【体験者:40代・会社員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。