夫
約5年前、私は乳がんのステージ3Bであることが判明し、入院・手術・抗がん剤・放射線治療を行いました。
治療自体も苦しいものでしたが、副作用は想像を絶するほどの辛さでした。
病気とは無縁で、元気だけが取り柄だったのに、治療中はまったく動けなくなり、家事も仕事もできなくなってしまいました。
私は見かねた夫が少しは手伝ってくれるのかと思っていたのですが、夫がしたことは義母への丸投げ!
私は体調が悪いのに加えて、義母に気を遣い余計に疲れる生活を送る羽目になったのです。
生存率
私はがんであることを告知されたとき、担当医から「ステージ3Bの場合、5年後の生存率は75%です。」と言われていました。
そのことを夫も知っていたので、私の切実な思いを伝えるために「私が死んだらどうするの?」と問いかけていたのですが、全く響かず……。
しかしつい先日、夫の職場で奥さんをがんで亡くした人がいることがわかり、夫は自分と重なる部分が多いと思ったのか、いろいろ話をしたと言っていました。
経験談
その同僚の人は奥さんを40代で亡くし、子どももまだ中学生だったそうです。
進行性のがんで亡くなった奥さんは、入院してからわずか2ヶ月で亡くなり、その間一度も家に帰って来れなかったとか。
お金のこと・家のこと・子どもの学校のこと……奥さん亡き後、同僚の人にはわからないことが多すぎて、本当に困ったと話してくれたそうです。
「奥さんを先に亡くすって、つらいぞ」と忠告された夫。
夫も、同僚の壮絶な体験談を聞いて、私の苦しみや将来への不安を、初めて自分事として捉え、深く感じてくれたのかもしれません。その日を境に人が変わったようになりました。
変化
夫は今、できる範囲で家事を手伝ってくれています。
何かあったときに困るのは自分だという自覚が生まれたのでしょう。
「私が死んだら……」という私の問いかけは、私にとって決してオーバーなものではありません。
最近は「私が死んだらどうするの?」と言うと、「縁起でもないこと言うな!」と怒る夫。
夫の反応には少し複雑な気持ちもありますが、それでも彼が私や家庭の将来を真剣に考えるようになったことは大きな変化だと感じています。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:RIE.K
国文学科を卒業し、教員免許を取得後はOLをしていたが、自営業の父親の病気をきっかけにトラック運転手に転職。仕事柄多くの「ちょっと訳あり」な人の人生談に触れる。その後、結婚・出産・離婚。介護士として働く。さらにシングルマザーとして子供を養うために、ファーストフード店・ショットバー・弁当屋・レストラン・塾講師・コールセンターなど、さまざまなパート・アルバイトの経験あり。多彩な人生経験から、あらゆる土地、職場で経験したビックリ&おもしろエピソードが多くあり、これまでの友人や知人、さらにその知り合いなどの声を集め、コラムにする専業ライターに至る。