厳しい両親に厳しく育てられた結果
A子さんの両親はとても厳しい人で、とにかく厳格に育てられました。
マナーや作法は当たり前、勉強から遊びについてもとにかく厳しく、苦痛に感じることも多くあったのです。
そんな両親に育てられたA子さんは、両親の理想の真面目な子に育っていたはず、だったのですが……
一人暮らしで解放感
社会人になって一人暮らしを始めたA子さんは、厳しい環境から解放された反動で、一時期は自由奔放な生活を送っていた時期がありました。
毎日のようにクラブ通いで酒浸り、挙句の果てにはワンナイトラブなど、まさに自身の解放感を追求する日々。
A子さん自身は、これは「今まで親に制限され続けた反動」だと思っていました。
それだけではなく、飲みの席などでは、「うち毒親なんだよねー」と、周りに愚痴ることもあったのです。
そんな風に自由に遊び続ける生活は数年続きましたが、職場で恋をしたことをキッカケに、なんと遊びを一切封印。
相手は同じ部署の先輩で、初めは見向きもされなかったのですが、A子さんの猛アタックの末結ばれました。
そしてプロポーズを受け、ついに両家で顔合わせをすることになったのです。
驚くほど褒められて、ハッと気づいたこと
A子さんは遊ぶのに忙しく実家に全然顔を出していなかったので、久しぶりに見た両親は老け込み小さくなっていて、とても驚きました。
それでも厳格な雰囲気は変わらず、「両親が望むような回答をしなくちゃ」と、緊張していました。
終始和やかな雰囲気で食事が進むと、
「彼くん、A子のどこを好きになったの?」
と、実母のドストレートな発言にビックリ!
思わず慌てるA子さんでしたが、彼は嬉しそうにこう言いました。
「A子さんは、とにかく凛としているんです」
姿勢の良さから礼儀正しさ、マナーが素晴らしく空気が読めて頭の回転が速くて、と、聞いているこちらが赤面してしまうほど褒められてしまったのです。
そしてそんな彼のセリフで、A子さんはハッと気づいたことがありました。それは……
本当にごめんなさい、そしてありがとう。
そんな風に色々教え込んでくれたのは、紛れもなく両親だったということ。
嫌なこともたくさんあったけど、間違いなく両親が今の自分を作ってくれていたのです。
それなのに、自分はそんな両親のことを「毒親だ」と笑いながら言いふらしてしまったことを、酷く恥じたのでした。
もしかしたら、過去の自分は、親に厳しく育てられた過去を否定することで、自分を正当化しようとしていたのかもしれない。
今A子さんは、2児の母として育児に奮闘中。
両親ほど厳しく育ててはいませんが、親になって初めて親の気持ちを知ることばかりです。
遅くなったけど、これから沢山親孝行したいと思っているそうです。
【体験者:30代・OL、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki.K
飲み歩きが趣味の元キャバ嬢。そのキャリアで培った人間観察力でコラムを執筆中。すっと人の懐に入ることができる天然人たらしが武器。そのせいか、人から重い話を打ち明けられやすい。キャバクラ勤務後は、医療従事者として活躍していたが出産を機に退職。現在はこれまでの経験で得た人間関係を取材に生かし、主に女性の人生の機微を記事にするママライター。