新人B子とのすれ違い
B子が私の部署に配属されたのは、1年前の春でした。
最初は素直で仕事熱心な子だと思っていたのですが、慣れてくるにつれて、何でも自己流で進めてしまうようになり、私は何度も注意しました。
「もっと報連相をしっかりしてくれる?」
言い方がきつくなっていたのは自分でも分かっていました。
でも、先輩としての責任感が先に立ってしまい、どう接していいのか分からなくなっていきました。
気まずい空気に疲れていた
B子も次第に口数が少なくなり、私を避けるような態度を取るようになりました。
職場の空気はどんよりとして、周囲にも気を遣わせてしまっているのが分かりました。
私だって、仲良くしたかった。けれど、プライドや疲れから素直になれず、いつの間にか「苦手な後輩」と決めつけていました。
突然の退職と、置き手紙
ある日、B子が急に「来月で退職します」と言ってきました。理由は「一身上の都合」とだけ。
私は驚きと同時に、どこかホッとしている自分にも気づきました。
最終出勤日の夜、B子のデスクに一通の手紙が残されていました。
「A子さんへ。うまく甘えられなくてごめんなさい。本当はもっと頼りたかったです。厳しい言葉の中にも、私を思ってくれているのが分かっていました。ありがとうございました。」
読み終えた瞬間、涙が止まりませんでした。
分かり合おうとする勇気
私はB子に、自分の思いをちゃんと伝えたことがなかった。注意するだけで、気持ちを受け止めようとしなかった。なのに彼女は、最後に「ありがとう」をくれました。
人間関係って、もっとシンプルだったのかもしれません。
ぶつかっても、気まずくなっても、心を開こうとする勇気。それが、関係を築く第一歩だったのだと、B子が教えてくれました。
【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。