デパコス売り場での出来事
デパートのコスメ売り場で働いていたときの話です。
毎日いろんなお客様を接客しますが、この日服装はバッチリお洒落をしているのに、完全なスッピンで来店したお客様がいました。
私が接客して担当することになったのですが、バッグからチラッと見えたのは結婚式の祝儀袋。
もしかしたら、この後結婚式に行かれるのかもしれないなと思いながら、話題には出さず接客を続けていました。
まずは試したい基礎化粧品があると、化粧水や乳液、美容液まで高級基礎化粧品一式を試されました。
「すごくいい」とご満悦な様子で、次は下地ファンデーションなども敏感肌で肌荒れしやすいので、いろいろ試したいと言われました。
もしかして……試す目的だけだった?
お客様に言われるがまま、化粧下地からファンデーションとベースメイクを完成させると「ここのブランドが気に入った。この際アイシャドウやリップなど全て買い換えたいので、新作を試したい」とのことでした。
新色のアイシャドウやチーク、リップを使いお客様の試したいと言われるコスメを全て試し、1時間ほどかけてほぼフルメイクが完成しました。
「こっちの色もいいわ」とカラーを迷われているようだったので、お客様の肌色にお似合いのカラーをおすすめしました。
すると、さっきまで大丈夫だったのに何だか肌がピリピリしてきてやっぱり肌に合わないのかも……と言い出し、結局何一つ購入せずにそのまま足早に帰って行ったのです。
コスメカウンターの本来の役割とは
スッピンから1時間もかけて新作のコスメでフルメイクをして、何も買わずに立ち去るなんて、正直、驚きを隠せませんでした。もちろん、買わなければいけないわけではありませんが、これだけ時間をかけたのに、と残念な気持ちになりました。
真意のほどはわかりませんが、これから結婚式に行くため、高級ブランドの新作コスメでメイクを完成させる目的で来店したのではないかと思ってしまいました。
デパートのコスメカウンターは、お客様に商品のテクスチャーや色味を実際に体験していただき、ご自身にぴったりの商品を見つけていただくための場所です。美容部員も、お客様に最適な選択をしていただくためにお手伝いをさせていただきます。
時には、このような意図で来店されるお客様もいらっしゃることに、複雑な気持ちになることがあります。この経験を通じて、コスメカウンターを多くのお客様が気持ちよく利用できるよう、改めて「テスター」の本来の目的について考えるきっかけとなりました。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2023年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kumi.M
保育士歴25年。ママたちの修羅場、バトルを多数目撃し、その経験を元にコラムニスト活動をスタート。アラフィフ主婦となった現在は、ママ友・育児・嫁姑問題などを、幅広い人脈を駆使してインタビューを行い、執筆する。