60代、スマホデビュー
60代にしてようやくスマホを持つようになり、はじめは電話の出方にすら戸惑う毎日でしたが、最近ではLINEも難なく使えるようになってきました。
息子夫婦に子どもが生まれてからというもの、孫の写真や動画が送られてくるのが日々の楽しみとなっています。
しかし、そんな楽しい日々の中でも、ふと不安が頭をよぎるようになりました。
孫のため、必死に学んだ「SNSのルール」
ニュースで目にする、中高年のSNSトラブル。
中には「うっかり」では済まされない事態になっている例もあり、孫のためにも気を引き締めなければ、と思ったのです。
孫の写真を載せてしまったり、個人情報を漏らしたりしては大変だと思った私は、SNSの使い方に関する本まで購入して自分なりに勉強を始めました。
友人から「お孫さんの写真を送って」とせがまれても、「お嫁さんに許可を取らないと」と、慎重すぎるくらい慎重になっていました。
世界中に公開されていた孫の日常
そんなある日、偶然見つけた息子の妻・A子さんのインスタグラム。
そこに広がっていた光景に、私は言葉を失いました。
孫の顔写真が、本名とともに何十枚も投稿されていたのです。
それも、誰でも見られる「公開アカウント」で。
しかも、保育園の名前や、送り迎えの時間、よく行く公園の名前まで……これでは生活しているエリアや生活リズムを晒しているようなものです。
私は危機感を覚え、息子に連絡しました。
「当たり前」に潜む危険性
ところが、息子は「A子は昔からSNS大好きだからね」と、まるで他人事のような返答でした。
「危険性がある」「将来、孫が嫌がるかも」と説明しても、理解しきれていない様子です。
結局、それからも投稿が止まることはなく、A子さんはフォロワーからの「いいね」やコメントを楽しんでいるようです。
この一件で、ネットリテラシーの問題は、私たち中高年だけの話ではないのだと痛感しました。
生まれた時からインターネットが身近にある「デジタルネイティブ」と呼ばれる世代だからこそ、かえってその便利さの裏にある危険性を意識しにくいのかもしれません。
可愛い孫の日常が世界中に晒されている……この不安とどう向き合えばいいのか、現代社会の思わぬ落とし穴に、私は今も頭を悩ませています。
【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。