「今年は俺がやる」と言った夫に、BBQの準備をすべて任せたら、思わぬ展開に。これは筆者の友人・美和さん(仮名)の体験です。

毎年の恒例行事が、実は苦行

半袖で過ごす季節になると、美和さんの家では庭BBQが恒例になります。

にぎやかで楽しそうな光景。でも裏側では、いつも彼女が動き回っていました。

買い出しも火起こしも後片づけも、全部ひとり。
終わるころにはぐったり。「明日は動けない」とつぶやくのが口ぐせでした。

「今年は俺がやる」その言葉を信じてみた

準備の数日前、夫が言いました。「今年は全部俺がやるから、仕切らせてよ」

さらに、「そっちは楽でいいよな、来客の相手しないんだから。ただ単に自分のペースで食材を焼いたり人の世話をしてればいいんだろ」と続けました。そのひと言に、美和さんは「一切、手も口も出さない」と無言で決意しました。

食材の買い出しから道具の準備、来客への連絡まで、すべて夫に任せました。義母に声をかけられても「主人が仕切ってますので」と笑顔で返す。

美和さんは「がんばってね」とつぶやき、ビール片手に楽しんでいました。

夫がパニック

始まってみると、現場は大混乱。

火がつかず、ようやくついても強すぎて食材は真っ黒。子どもは飽き、親戚たちも落ち着かない様子。

「これ、全然足りないじゃん」そうつぶやく夫の手には、少しの肉とウィンナー。飲み物も切れて、親戚が「買ってこようか?」と声をかけました。

夫は汗だくで言いました。

「ちょっと、お願い……こっち来て」

美和さんは心の中でつぶやきます。──ほら、見たか。

同じ時間を過ごすって、こういうこと

片づけが終わるころ、夫はぐったりと座り込んでいました。Tシャツは炭で汚れ、手には使い込んだトング。

「やっぱりお前、すげぇな……」
そのひと言には、ようやく気づいた妻への敬意がにじんでいました。

「火起こしとか、BBQのこともっと調べようかな」
後片づけする夫の姿に、美和さんは心の中で小さくガッツポーズをしたそうです。

【体験者:30代・会社員、回答時期:2024年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:神野まみ
フリーランスのWEBライター・コラムニスト。地域情報誌や女性向けWEBメディアでの執筆経験を活かし、医療・健康、人間関係のコラム、マーケティングなど幅広い分野で活動している。家族やママ友のトラブル経験を原点とし、「誰にも言えない本音を届けたい」という想いで執筆を開始。実体験をもとにしたフィールドワークやヒアリング、SNSや専門家取材、公的機関の情報などを通じて信頼性の高い情報源からリアルな声を集めている。女性向けメディアで連載や寄稿を行い、noteでは実話をもとにしたコラムやストーリーを発信中。