母子家庭で育った、A子さん姉妹。
愛情には恵まれていましたが、生活は常にカツカツで、レジャーを楽しむ余裕もありません。
ところがある夏、家族での沖縄旅行が決まり――?
母の深い愛に胸がいっぱいになる、素敵なエピソードです。

お友達が、ちょっぴり羨ましい

我が家は母子家庭で、母と妹、そして私の3人暮らしでした。

私たち家族はとても仲が良く、毎日楽しく過ごしていましたが、お金には余裕がありません。
子どもの頃は、夏休みになると、旅行やテーマパークに連れて行ってもらえる友達を、とても羨ましく思ったものでした。

本当は、みんなのように素敵な場所へおでかけしたい。
でも、私たち姉妹は、決してそれを口にはできませんでした。
家族のために、母がどれだけ苦労しているか、子どもながらにわかっていたからです。

「えっ、うちにそんなお金あるの、、、? 」

ある年の夏休み。

「今年は、家族で沖縄旅行に行くわよ♪」
突然、母がニコニコしながら言うではありませんか。

「えっ!?」
私と妹はびっくり。

「うちにそんなお金あるの……?」
もちろん嬉しいのですが、本当にびっくりし、ついついお金の心配をしてしまいました。

「大丈夫! お母さん、今までお金貯めてきたんだから。いつも節約している分、今年は贅沢しちゃうわよ〜!」
明るく、どんと胸を叩いてみせる母。
そのときの母の表情は、なんだかとても誇らしげで、そして嬉しそうでした。

私たち姉妹は顔を見合わせ、「やったー!」と飛び上がりました。

幸せいっぱいの沖縄旅行

親子3人での沖縄旅行は、まさに夢のような時間でした。

美味しい沖縄料理を食べて、ほっぺが落ちそうになったり、美ら海水族館ではジンベエザメに歓声をあげたり。
琉球グラスの製作体験では、3人おそろいのグラスを作りました。
琉球村で沖縄衣装を着て、写真を撮って――。

帰りたくない、そう心からそう思うほど楽しくて、幸せいっぱいの旅行を心ゆくまで満喫しました。

母からプレゼントされた夏の思い出は、私たち姉妹にとって、最高の宝物になったのでした。

最高の夏、再び

あれから時が経ち、私も妹も大人になりました。

ある日、母とお酒を飲みながら昔話をしていたとき、ふと、あの沖縄旅行の話になりました。

「実はあの旅行、ローンを組んで行ったのよ」
照れくさそうに笑いながら、カミングアウトした母。
「お友達みたいに、あんたたちにも楽しい思い出を作ってあげたくてね」

その言葉を聞いて、胸がいっぱいになりました。
こんなに愛情いっぱい育ててくれた母に、今度は私たちが、精一杯の親孝行をしていきたいと、強く思います。

実は今年の夏、あのときぶりに、親子3人で沖縄に行く計画を立てました。
大切な思い出が、きっとまたひとつ増える予感。
これからも毎年、姉妹で最高の夏をプレゼントをするからね、お母さん。

【体験者:30代女性・会社員、回答時期:2025年6月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。