ささやかな贅沢で自分を労わりたかったのに、運転手さんがまさかのおしゃべりモンスター!
もう限界……そんな彼女を助けてくれた、救世主とは――!?
今日は自分を甘やかすぞ!
コールセンターで働く私は、その日も理不尽なクレーム対応に追われ、くたくたに疲れ切っていました。
クレーマーと呼ばれる人も多く、今の自分の環境は、とにかくストレスが溜まります。
「今日ばかりは自分を甘やかしてもいいはず」
やり切れない思いの私は、思い切って普段は使わないタクシーで帰宅することに。
少しでも静かな時間を過ごしたい、そんな気持ちで乗り込んのでしたが――。
こんなはずじゃなかった――
運転手さんは、50代くらいの陽気な男性でした。
おしゃべり好きなようで、「いや〜、この前有名人の〇〇さんを乗せたんですよ!」
「お姉さん、どんなお仕事してるの? 」と、ノンストップで話しかけてきます。
きっと盛り上げてくれているのだろうと、最初は愛想よく応えていたのですが、私の疲れはピークに達し、だんだんと気持ちが重くなってきました。
「せっかくタクシーに乗ったのに……これじゃあ職場と変わらないじゃない」
疲れた自分を労わろうと、精一杯の贅沢をしようと思ったのに、私にはそれさえも許されないのか。
むしろ、お金を払って嫌な思いをしている分、仕事のほうがマシかもしれない。
ああ、頼むから黙ってくれないだろうか――。
救世主は、まさかのアレ!?
ついには、運転手さんの話に相づちを打つ気力すらなくなり、私は黙りこくってしまいました。
それでも運転手さんはお構いなしで、「ちょっと〜、聞いてるの〜?」と空気を読んでくれません。
そのときです。手に持っていたスマホが、突然反応しました。
「すみません、聞き取れませんでした」
ありがとう(涙)
まさかの音声アシスタント機能の返答に、運転手さんも私もびっくり。
私の代わりに、音声アシスタント機能が「勘弁して」と言ってくれたような気がして、つい吹き出してしまいました。
運転手さんは苦笑いをすると、ようやく口を閉じる気になったようです。
音声アシスタント機能よ、ありがとう。
しかし、運転手さんが悪いわけではありません。
私を車で送ってくれて本当にありがとうございます。ただ今日ばかりは、お話はごめんなさい。
家に帰ったら温かいお風呂に入ろう。
そうだ、もったいなくてずっと使えていなかったあの入浴剤、今日は使っちゃおうかな。
そんなことを思っていたら、なんだか心が軽くなったのでした。
【体験者:30代女性・派遣社員、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:大城サラ
イベント・集客・運営コンサル、ライター事業のフリーランスとして活動後、事業会社を設立。現在も会社経営者兼ライターとして活動中。事業を起こし、経営に取り組む経験から女性リーダーの悩みに寄り添ったり、恋愛や結婚に悩める多くの女性の相談に乗ってきたため、読者が前向きになれるような記事を届けることがモットー。