今回は、友人のA子さんに聞いた感動のお話をご紹介します。長年連れ添った夫の“ある持ち物”から、言葉では伝えられなかった深い愛情に気づいたというA子さん。不器用な男性の優しさが胸に響く、静かで温かな物語です。

大掃除で見つけた意外なもの

先日、我が家では年末の大掃除をしていました。夫はいつものように無関心で、テレビを見ながらお茶をすすっていました。
けれど、私が彼の古い衣類や小物を整理していたとき、ふと財布の中から一枚の紙が落ちたんです。
茶色くなった小さな紙切れ。
捨ててもよさそうなそれを何気なく拾い上げたとき、私は思わず息をのみました。

ボロボロの紙に書かれていた言葉

その紙には、私が昔書いたメモがそのまま残っていたのです。
結婚して間もない頃、朝が早い夫に持たせたお弁当に添えた「無理せず、今日は早く帰ってきてね」の一言。
「え、これ、、、捨てずに持ってたの?」と驚いて夫に見せると、彼は照れくさそうに笑って「なんか、元気出るからさ」と一言。
普段、口数が少なくて無愛想にすら感じる彼が、そんな気持ちを持っていてくれたことに、私は胸がいっぱいになりました。

あの日の言葉は、ちゃんと届いていた

私はすぐにキッチンに戻って、涙を見せないように背中を向けました。
でも、手が震えていたのを自分でも感じていました。
結婚して15年。文句も言わず、淡々と仕事をこなし、家では静かに過ごす夫。
私はどこかで、「この人、本当は私のことなんて興味ないんじゃないか」と思っていたのかもしれません。
でも違ったんです。あの日、何気なく書いたあの一言が、彼の心に残り、今もそっと支えていたなんて。

言わなくても、伝わっていた愛

その夜、私は「いつもありがとうね」とだけ伝えました。
夫は、いつものようにうなずくだけでした。
でも私はもうわかっています。彼なりに、ずっと私を大切にしてくれていたこと。
言葉よりも静かな行動や、小さな思い出が、こんなにも人の心を温めるなんて思いませんでした。
不器用な愛情に、ようやく気づくことができて本当によかった。これからも、そんな彼と静かに年を重ねていきたいと思います。

【体験者:30代・女性会社員、回答時期:2025年5月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:池田みのり
SNS運用代行の職を通じて、常にユーザー目線で物事を考える傍ら、子育て世代に役立つ情報の少なさを痛感。育児と仕事に奮闘するママたちに参考になる情報を発信すべく、自らの経験で得たリアルな悲喜こもごもを伝えたいとライター業をスタート。