後になって「あの時は分かっていたつもりだったけど、実際は全然分かっていなかったんだ……」と気づくことってありますよね。特に育児に関しては子どもの性格によるところも多く、予想外の連続です。今回は友人の体験談をご紹介します。

余裕だと思っていた、あの頃

息子が生まれた頃、私は正直「育児、意外といけるかも」と思っていました。

夜泣きもほとんどなく、抱っこすればすぐに寝てくれて、授乳も順調。
周囲の「育児は大変だよ」という声も、どこか大げさに感じていました。

20代という若さも手伝って、体力にも自信がありました。
“子育てって、慣れればどうにかなるものだな”と、すっかり甘く考えていたのです。

……今思えば、本当に浅はかでした。

無神経な一言

そんなある日、久しぶりに幼なじみの友人と会いました。

彼女はすでに2人の子どもを育てる先輩ママで、当時は上の子が小学生、下の子が幼稚園児。
会った瞬間からどこか疲れた表情をしていて、近況を聞くと「毎日バタバタだよ~」とぽつり。

当時の私は、たかだか数ヶ月の育児経験で、“分かったつもり”になってしまい、軽い気持ちでこう言ってしまいました。

「そんなに大変なの? うちの子は手がかからなくて、結構楽かも」

友人は一瞬驚いた表情になりましたが、すぐに苦笑いで「そっか」とだけ言いました。
私はその時、自分の言葉の重さを想像することすらできていませんでした。

後悔の嵐

ところが、子どもが2歳を過ぎ、イヤイヤ期に突入すると、育児の難易度はまさに別次元に!
とにかく泣く、暴れる、言葉が通じない。

ごはんを用意しても「いらない!」、お風呂に入ろうとすれば「やだ!」と叫び出します。
夜泣きも始まり、私の睡眠時間はバラバラに。

家事もままならず、自分の時間はゼロ。
1日が終わっても“何もやれていない”という虚無感に包まれる日々……。

そんな毎日の中で、友人の言葉の意味がようやく骨身に染みて分かりました。
同時に、「私、あの時どれだけ無神経なことを言ってしまったんだろう」と胸が締め付けられる思いでした。

だから今、できること

もしあの時に戻れるなら、ただただ「大変だよね」と共感し、そっと寄り添う言葉をかけたい。

でも過去の言葉は消せません。
だからこそ、今の私は、人の育児に軽々しく口を挟まないように気をつけています。

たとえ自分が“うまくいっている”と感じても、それはほんの一部の側面に過ぎません。
本当の思いやりは、経験の後にしか身につかないのかもしれませんね。

【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年3月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。