聞こえてしまった言葉
保育園に子どもを送った帰り道のことでした。
玄関のそばで、同じ保育園に子どもを通わせるママ達が立ち話をしていて、聞くつもりはなかったのに、ふと耳に入ってしまったのです。
「あの人、毎日ノーメイクで地味よね。なんか貧乏そう~(笑)」
声の主は、ママ友の中でもリーダー格のM美さんでした。
そして、どうやら“あの人”とは私のことのようでした。
古びたリュックにスニーカー、ノーブランドのパーカー。
確かに、子どもと公園で遊んだり、動き回ったりするための服装なので、おしゃれでも華やかでもありません。
私の本当の生活
実は私は、在宅でキャリアコンサルタントとして働いています。
国家資格を持ち、相談件数は月に30件以上。
相手は会社員や学生、子育て中の主婦の方まで様々です。
フリーランスだから、収入もすべて自分次第です。時には夫より稼ぐ月もあります。
でも、それをわざわざ見せびらかすつもりはありませんでした。
子どもとの時間を大切にしたくて、家でも外でも動きやすく、気取らない暮らしを選んだだけなのですから。
私のことを知らない人からすれば、“地味で貧乏そう”に見えたとしても、それは仕方のないことだと思っていました。
まさかの再会
そんなある日、保育園の先生から「働き方に悩むママが多くて……」と相談され、私がキャリア相談会を開催することになりました。
告知には“国家資格を持つ専門家が対応”とだけ記載し、私の名前はあえて伏せてもらいました。
そして迎えた当日、受付に現れたのは、あの“貧乏そう”と陰で言っていたM美さん!
M美さんは私を見るなり目を丸くし、「あなたが先生なの?」と絶句した様子。
私は静かに「よろしくお願いしますね」と微笑みました。
彼女はしばらく無言でしたが、やがて気まずそうに頷いて席に着きました。
それぞれの生き方
結局、M美さんは会が終わるとそそくさと帰ってしまいましたが、キャリア相談会に来たということは、彼女も何か働き方について悩んでいるのでしょう。
見た目や暮らしぶりで判断する人もいるけれど、私は私のやり方で、誰かの力になれたらいいと思っています。
人は見た目で判断できない、ということを改めて実感した出来事でした。
【体験者:30代・女性、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。