A子の実母と義母
A子の実の母は、昔からケチな傾向がありました。実母はいつも自分のみならず、自分の子どもや今は亡き夫にも節約を強いてきたため、節約が生活の一部となっており、気づいた頃にはそれが当たり前になっていました。もしかしたら、過去の苦労や将来への漠然とした不安が、そうさせたのかもしれません。A子が結婚してからも、「ここまで育ててあげてきたんだから、自分たち親のことを養って当然」というスタンスを崩しませんでした。
一方、A子の義母は実母とは真逆で、一緒に外食したときや買い物に行ったときなど、A子たち夫婦にお金を出させたくないようで、ありがたいことにいつも気遣ってくれます。
レストランでの会計後……
A子の義父も数年前に亡くなっています。
そのこともあり、せめてもの親孝行をしたいという気持ちから先日実母と義母を連れて初めてのお出掛けをしました。
A子の実母と義母、夫、息子の5人で一緒に藤の花を見に行った帰りに昼食をとろうとレストランに入った時のことです。
レストランでの食事後、私が息子とトイレに立ったタイミングで、会計をしてくれた夫。もとから母親2人の分も払うつもりでした。しかし、義母はA子に気付かれないように、夫に「少ないけど」と言い、1万円を渡してくれたらしいのです。夫は「いらないよ」と一度は言ったものの、義母が「受け取って!」と譲らなかったこともあり、受け取ったようでした。
義母と実母の違いは明白……
一方、実母はというもの、「いくらだったの?(払おうとする意思がある)」「ごちそうさま(お礼の意味を込めて)」等々の言葉は一切なく、子どもであるA子夫婦が払って当たり前のスタンスを崩さず、無言で皆と一緒に席を立ったのです……。A子はなんだか申し訳なくなり、義母と夫に実母の分もお礼を言ったもののさすがに実母のふるまいには戸惑いを覚えたのでした。
実母の反応……
帰宅後、今回の食事代は義母がほぼ払ってくれたこと、そしてなぜ夫にさえお礼を言わなかったのか実母に訴えたA子。すると実母は、「そう、別にいいじゃない。美味しかったしまた行きたいわ」と一言だけ……。
A子は実の娘ながら、「この人とはやはり価値観が大きく違うな」と感じました。将来息子が大人になり、大切な自分の時間を割いてごはんに連れて行ってくれたときには、たとえ息子から「いらない」と言われても、せめて自分の食べた分くらいのお金は渡そう。もしご馳走になったのならお礼をしっかりと伝えようと、心に誓ったA子でした。
A子さんにとって実母は反面教師となり、改めて感謝を伝えること、そして相手の好意を当たり前だと思わないことの大切さを再確認することになりました。
いつもA子さん家族に気を遣ってくれる義母には、気が付いた時にお礼の品などを送っているそうです。
親しき中にも礼儀あり。その言葉を忘れないようにしたいですね。
【体験者:30代・女性主婦、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:ichika.K
2児の育児を機に、ママの悲喜こもごもを描くライターとしての活動をスタート。子育てメディアなどの執筆を経て、独立し現在はltnでコラムを連載中。大手企業の総合職でのOL経験、そこから夫の単身赴任によりワンオペでの育児を行った経験から、育児と仕事を両立するママの参考になる情報を発信すべく、日々情報をリサーチ中。