子ども同士の仲から始まったご縁
ママ友のAさんには、4歳の息子・B君がいます。B君には幼稚園でとても仲の良いお友達C君がいて、ふたりは毎日のように一緒に遊ぶほどの関係です。そんなふたりの絆がきっかけとなり、Aさんも自然とC君のママ・Mさんと親しくなっていきました。
最初は気軽なあいさつから始まり、次第に「今度うちに遊びに来ない?」と、親子ぐるみの交流へ。お互いの家を行き来しながら、楽しい時間を過ごしていたそうです。
手ぶらの訪問と、戸惑いの気持ち
ある日、C君とMさんがAさんの家に遊びに来ました。以前AさんとB君がC君宅を訪れたときは、お菓子やジュースを持参し、ちょっとした手土産のようなやりとりが自然に交わされていました。それは、他のママ友との間でも暗黙のマナーのようなものだったのです。
けれどその日、Mさん親子は手ぶらでやってきました。
他のママ友とは暗黙の了解があっても、Mさんとの間で手土産を持参するのは必須ではありません。
そのためAさんは気にしないようにしていましたが、自分が用意したお菓子をC君が夢中で食べる様子や、「家ではお菓子買わないから、今のうちにいっぱい食べておきなさいね」と声をかけるMさんの一言に、少し戸惑いを感じてしまったといいます。
空気を変えた、息子のひと言
そんな気まずさがうっすらと漂う中、思いがけずその空気を変えたのは、4歳のB君のひと言でした。
「C君は何を持ってきてくれたの? みんな、お友達の家に行くときはお菓子を持っていって一緒に食べてるよね?」
B君にとっては、ごく自然な疑問だったのでしょう。Mさんは少し慌てて「今日は忘れちゃったの」と答えましたが、そこでC君がこう続けたのです。
「うちはいつも持って行ってないよ。お母さんが“お友達の家のお菓子を食べておいで”って言うから。でも、僕も自分のお菓子をお友達にあげて、一緒に食べたいんだ。」
その言葉に、Mさんは一瞬言葉を失い、黙り込んでしまったそうです。Aさんは気まずさを感じながらも、すぐに別の話題に切り替えて、場の雰囲気をなんとか和らげました。
優しさが生まれた再訪の日
数日後、またC君とMさんがAさんの家を訪れたときのこと。今度はMさんが、たくさんのお菓子を持参してくれました。それを見たB君とC君は、とても嬉しそうにお菓子を分け合いながら、前よりももっと楽しそうに遊んでいたそうです。
その様子を見ていたAさんは、「節約ももちろん大事だけれど、人付き合いにはちょっとした気配りや思いやりが大切なんだな」と改めて感じたといいます。
そして何より、大人ではなかなか言い出せないことを、まっすぐに伝えてくれたB君の素直な言葉が、みんなの心に静かに届いていたのでしょう。小さな声がきっかけとなって、お互いの優しさが少しずつ伝わっていった出来事でした。
【体験者:30代・主婦、回答時期:2025年5月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容をもとに、個人が特定されないよう構成しています。
ltnライター:北田怜子
経理事務・百貨店販売を経て、現在はWEBライターとして活動中。家事や育児と両立できる働き方を模索する中でライターの道へ。自身の体験を活かしながらリアルで共感を呼ぶ記事を多数執筆。人間関係・子育て・日常の“あるある”を中心に、女性に寄り添ったコンテンツを発信している。