便利な「置き配」が当たり前の日常
つい先日のこと。私は戸建てに住んでいて、普段の配達は「置き配」に設定しています。
置き配はとても便利。不在のとき以外にも、子どもが寝ているときや家事で手が離せないときも助かっています。
夜9時、突然のチャイムと不審な訪問者
ところが、その日は違いました。
「ピンポーン」
夜9時前。子どもたちと寝る準備をしていたとき、玄関のチャイムが響きました。
普段は置き配を利用しているため、この時間にチャイムが鳴ることはありません。驚いて、慌ててインターフォンのモニターを確認。
そこに映っていたのは、見慣れない男性の姿でした。「配達です」という声に、夫宛の受取り印が必要な荷物かもしれないと思い、はんこを手に玄関のドアを開けました。以前、一度だけ夫宛に受取り印が必要な荷物が届いたことがあり、その可能性を考えてしまったのです。
ドアを開けた瞬間の“異常な距離感”
ドアを開けた瞬間、私の心臓は跳ね上がりました。
なんと、ドアのすぐ目の前、まさに顔と顔がぶつかるのではないかという距離に、帽子を深く被った男性が立っていたのです。
彼は「ふふっ、ハンコは要りません」とにやっと笑い、荷物を差し出してきました。
私は反射的にそれを受け取りましたが、体は震え、心臓がドクンドクンと早く脈打つのを感じました。
これまでの配達員さんと違う不自然な行動
冷静になって考えてみても、これは異常でした。
これまでの配達員さんは、玄関のドアから階段を数段降りた位置――つまり、インターフォンのボタンの前で待っていてくれるのが普通。
特に夜遅い時間であれば、受け取る側が怖がらないように、少し離れた位置で荷物を渡してくれるのが常でした。
それなのに、この時の男性は、まるで私がドアを開けるタイミングを見計らっていたかのように、ドアを開けてすぐの真正面に立っていたのです。
帽子を目深に被った男性が、夜9時に玄関ドアの目の前にいる。しかも笑いながら「ハンコは要りません」と言いながら差し出された小さな荷物。私は一瞬、「この人、本当に配達員なの?」と疑ってしまいました。
心に残る恐怖と今後の対策
夫が帰宅後、荷物について聞いてみると「俺の荷物は全部置き配なんだけどな。変だな」とのこと。
高価な品や生ものでもなく、ちゃんと予定していた荷物ではありましたが、もし仮に危険なものだったら……? そう考えると、背筋がヒヤリとしました。
最近は、本当にたくさんの人が配達に携わってくださっています。私たちの暮らしを支えてくれる配達員の皆さんには、心から感謝が尽きません。
しかし、あの時の体験は夜遅くの予期せぬ状況が積み重なったこともあり、私の心に拭い去れない恐怖を残しました。
もちろん、あの配達員の方に悪気があったわけではないと思います。多様な働き方で生活を支えてくださる全ての配達員の方々に感謝しつつも、防犯意識を持つことは忘れてはならないと感じました。
それ以来、必要のない限りは夜遅い時間にチャイムが鳴ってもすぐにドアを開けず「置き配でお願いします」と伝えるようにしています。
簡単にドアを開けない。あの夜を思い出すたびに、改めて防犯意識の大切さを胸に刻んでいます。
【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年6月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yuki Unagi
フリーペーパーの編集として約10年活躍。出産を機に退職した後、子どもの手が離れたのをきっかけに、在宅webライターとして活動をスタート。自分自身の体験や友人知人へのインタビューを行い、大人の女性向けサイトを中心に、得意とする家族関係のコラムを執筆している。